本研究は、大都市における都市形成と地方自治体の行財政の分析を通じて、今日の地域政策の特質を把握することをめざし、あわせて、地方自治体と大都市地域社会の把握のために有効な、社会学的実証研究の手法の開発を試みるものである。この2つの目的の達成のため、61年度から3年間にわたって、研究組織による研究会をかさね、調査対象地として兵庫県神戸市を選んで、調査研究を行ってきた。今年度はその最終年度にあたるために、前年度までに実施できなかった調査を継続して行なうとともに、報告書の取りまとめに向けての検討を行った。 今年度の調査としては、従来の調査を補足する補充的な聞き取りおよび資料収集を行なったほか、特に次の2つの中心をおいた。(1)財政分析として、従来の資料に加えて、最近20年間の神戸市の各種会計の動向を明らかにするために、資料を収集し、これを独自の分類カテゴリーを用いて再集計を行なった。(2)調査票を用いた調査としては、市内の主要な団体の組織と活動の実態を把握するために、経済団体、労働団体、文化体育団体、福祉団体をはじめ、婦人団体や政治団体等を含む、約500の団体に対する郵送調査を実施した。また、これらの団体の市域単位の連合組織を中心とする主要な団体、約30に対して面接調査を行なった。 これらの各種の調査と分析を通じて、(1)神戸市が近年の産業構造の転換の過程で、都市の構造を大きく変化させてきていること。(2)大都市の地方自治体の政策が、かつての産業・経済改革を主とするものから、福祉を重視する時期をへて、近年では、市民の文化的な生活に深くかかわるような傾向を強めていること、等が浮き彫りにされてきている。
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