研究分担者 |
竹内 隆夫 金城学院大学, 文学部, 助教授 (40105747)
合田 濤 神戸大学, 教養部, 助教授 (00106593)
山路 勝彦 関西学院大学, 社会学部, 教授 (30090731)
岩崎 信彦 神戸大学, 文学部, 助教授 (20086052)
長谷川 善計 神戸大学, 文学部, 教授 (50030507)
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研究概要 |
(1)従来の社会人類学を中心とする沖縄村落研究は門中とその祭祀機能に焦点をあててきた. しかし門中の構成要素としてのヤー(家)それ自体の検討は必ずしも十分ではなかった. ヤー(家)はイデオロギー的には一系であり,この点では本土のイエに似ているが,本土とちがい次三男の家分れが比較的容易である. これは歴史的には地割制度の下で家産が成立せず,全家族成員に耕地が割りあてられたのに由来するものとみられる. 北部では門中化以前にはヤーの連続性,一系性が欠如していたことが歴史的研究では示唆されている. 父系単系制成立の物質的条件が未整備なままに,イデオロギーの面での父系単系化が進行して成立した家族がヤーであるとみられる. (2)従来門中化現象は北部や離島に関して多くの研究が指摘してきた所であるが,南部については門中は完成した形で存在すると想定されていた. ところが調査地佐敷町小谷(おこく)では父系傾斜的集団から門中が形成されるようになったのは比較的近年であると考えられ,南部についても門中化を検討する必要のあることが明きらかとなった. これは新知見である. ここでは門中カテゴリーは未成熟であり,むしろ父系リネージとしてのチュチョーデーが,村落内の共同機能にも媒介されて,もっとも重要なカテゴリーである. (3)従来沖縄村落は地割制に由来して財産の均等化が著しく農民層分解が少ないと理解されてきた. 次三男の分家創出の容易さも結びつき,農業,農村内部での過剰就業状況が想定される. 佐敷町屋比久(やびく)での就業構造の調査結果によれば. ,他出者が多いことにもよるが,完全失業者は皆無に近く(ただ過去の経験者は4割以上),不安定就業層は少ない. 復帰後の公共投資,短期的国体景気等がその背景であろう. 長期に本土滞在をしUターンした者は昭和20年代と復帰直後に多い. 農村の就業構造の解明にあたっては労働市場論的接近の方が有効である.
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