研究概要 |
本研究は, 都市家族の生活構造に関する包括的・体系的研究を実地調査を中心に実証的に行なうべく, 昭和61〜62年度にかけてなされたものである. 61年度は, 57年度交付の科研費により実施した村落地域(農村-埼玉県大里村, 漁村-千葉県千倉町)の家族の生活構造に関する実地調査研究の成果を踏まえ, それとの比較の観点から都市地域として東京都八王子市を選定し, 八王子市の家族生活の諸側面の実態調査を中心に都市家族の生活構造の実証的研究を集成させようとした. 家族の生活は今激しい社会変化の中で大きな変換を迫られ, あるいは余儀なくされているが, 都市の家族が実際にどのような状況にあるのか, 都市地域と村落地域とそれぞれの地域特性を背景に家族の生活構造にいかなる特性, 相互浸透性, 異同がみられるのかなどを比較検討をめざした. 社会変動の中で両者が時系列的にどのように変化しあるいは変化しないでいるか, 今後の展望はどうかなど理論的研究(既成の研究は研究を基)に, 生活構造の尺度や枠組みの検討, 実態調査の実施, 調査結果の集計整理, 統計化などを61年末から62年初めにかけて行い62年度は, そのまとめと印刷刊行の進行に入っている. 主として実地調査での結果を要約すると, (1)調査実施自体, 村落地域は受容性が高く, 協力的で回収率も高いが, 都市地域はとりわけ住宅地で非受容的, 閉鎖的, 不在, 非協力的で回収率は低い. 八王子市は旧くからの自己完結的機能の町であったが今さらに周辺部が拡大し多様な構造・機能の市として成長している. 家族も地域や町により多分に変化があるが, 全般的に, 都市型家族の傾向が強く, 家族構成は小規模化, 被雇用者(工・商業)層が多く, 世代間関係における老親と子供の同居世帯は少な きの村落地域と比べかなり都市的家族様態が強い. ただ形態的な同族・親族関係が一部残り, その点では つの村落地域に似通う. 村落地域の方が土地住居余裕のため同居のし方などかえって進んでいる面もみうけられる.
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