研究概要 |
わが国の社会的選抜システムは従来、学歴主義というレッテルのもとにきわめて単純化されて表現されてきた。本研究では、具体的な職業内容,職業組織の採用,昇進の分析を通して、より現実に近い教育と社会的選抜との関係を描きだすことを目的としている。そして多様な選抜システムを抽出、整理するなかで、社会や技術の変化に対応できる選抜システムとは何かを探索しようとするものである。 今年度(昭和61年度)は研究分担者がそれぞれ下記のようなテーマを設けて、研究を進めた。研究の進捗状況は毎月の研究会において報告され、意見交換を行っている。 1.戦前期における非学歴的選抜の事例研究(天野郁夫)2.心理テスト等の非学歴的選抜手段の情報価値と利用状況について(荒井克弘)3.人材の発見,選抜,育成プロセスの研究-組織と個人の観点から-(矢野真和)4.科学者および技術者の選抜制度-高学歴集団の選抜-(塚原修一) 天野は戦前期の非学歴的な選抜システムとして、試験検定と組織内の教育訓練システムの2つを指摘し、「独学」を助ける手段として当時どのようなものがあったか、そしてどのような職業においてこれらのルートが主に機能していたかを歴史的に検討している。今年度は教師、技官(公務員)について研究が進められた。荒井は米国における雇用(Employment)テストの発展について、文献を整理する一方、わが国で雇用テストがどのように現在、利用されているか、大手のテスト産業へのヒアリングを行った。矢野はプロ・スポーツ家を事例に採り上げ、選抜制度、採用時の評価とその後の実績との関係などについて定量的な分析を行った。塚原は高学歴を特徴的な職業属性とする大学等の研究者を対象としてとりあげ、そこでは何が選抜の決め手となるのかについて研究を進めている。
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