研究課題/領域番号 |
61301037
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研究機関 | 国立教育研究所 |
研究代表者 |
荒井 克弘 国立教育研究所, 第2研究部第1室, 室長 (90133610)
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研究分担者 |
塚原 修一 国立教育研究所, 研究員 (00155334)
矢野 真和 東京工業大学, 工学部社会工学科, 助教授 (30016521)
天野 郁夫 東京大学, 教育学部, 教授 (50022398)
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キーワード | 学歴主義 / 選抜 / 試験制度 / 採用試験 / 昇進昇格 / 独学 / 職業資格 |
研究概要 |
各研究分担者から最終的な報告が行われ、次のような議論が交わされた。 日本の近代化初期には、独学により立身する道は高度な資格職業についても残されていた。しかし、正規の学校教育の普及によって、これらの職業資格の受検に要求される基礎学歴は次第に上昇し、独学者の上昇移動の道は閉ざされていった。それは急速な近代化に即応していかねばならない後発国家の宿命であったともいえる。日本は学校を人材配分機能として先鋭化させる一方、企業内教育に代表されるように、職場内に職業能力養成の場をつくることにも熱心であった。誤解を恐れずにいえば、学校は競争と選抜の場、職場は教育と育成の場へ機能の逆転が生じた。高等教育機会が普及し、進学者が増えるという教育上望ましい変化がむしろ教育の弊害を拡大するという不可解さはこの機能の逆転と無縁ではないであろう。しかし、最近は企業の変化が著しい。高齢化、高学歴化、産業構造の変化などを理由に、選抜を強化した新しい人事管理を開発している。学校も競争、企業も競争という状況が現実となりつつある。これが生涯学習社会化ひとつの側面であるのかもしれない。プロ野球のドラフト制度を追跡した研究では、プロスポーツのような能力概念のはっきりした世界においても、入口の選抜の妥当性は低いことが明らかにされた。その他の一般的職業においては、尚更のことといえよう。だからこそ、教育と育成が大切だという示唆がこの事例からも引き出される。選抜社会が強調されるなかにあって、教育・育成の大事さを強調することこそ「学歴社会にかわる社会的選抜システム」のありかたを示唆するものといえよう。
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