研究課題/領域番号 |
61301055
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
柴田 翔 東大, 文学部, 教授 (00011312)
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研究分担者 |
新井 皓士 一橋大学, 経済学部, 教授 (60022117)
石井 正人 東京大学, 文学部, 助手 (50176145)
松浦 純 東京大学, 文学部, 助教授 (70107522)
浅井 健二郎 東京大学, 文学部, 助教授 (30092117)
池内 紀 東京大学, 文学部, 助教授 (70083277)
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キーワード | 文学 / ユートピア |
研究概要 |
本研究は、西欧ユートピア思想史を概観したうえで、様々なユートピア思想のドイツにおける受容の系譜並びにドイツ文学(思想)に現れるユートピア(的)像の系譜をたどり、更に、文学的創造力の根源としてのユートピア的想像力の意味を明らかにしようとする試みである。昭和61年度においては、古代・中世・近世に出現したユートピア像を俯瞰し、産業革命前後からの西欧合理主義社会に固有な近代の具体的なユートピア像及び思考方法としてのユートピアを再検討することが研究の主たる課題であった。新たに得られた研究成果を、以下のテーゼに示す。1.環境・社会が人間との関わりで孕む否定的矛盾は、古代からユートピア像の成立の契機となっている。(プラトンの理想国家、アトランティス,テオクリトスの牧歌)2.その意味でアルカディアも都市文明批判という観点からユートピアの一形態である。3.理想都市国家建設・制度措定によるユートピアの実現と、反制度・反歴史的特質を具えたアルカディア幻想とは対立しない。(【自!`】【由!`】【幸!`】【福!`】を希求するパトスに支えられて【制!`】【度!`】を志向する『太陽の都市』、【自!`】【由!Μ】【意!`】【志!`】を謳いつつ様々な【前!`】【提!`】【条!`】【件!`】に縛られる『テレーム』の僧院』)4.この二律背反状況は20世紀に連なるユートピア思想の基調を成している。5.どの時代のユートピア空間も自律的,自己完結的であるが、時代の特色と描き手の知的状況及び現実把握の限界を如実に反映している。6.現実超克による政治的変革(マンハイム)というユートピアの基本的な意識は、詩的創造行為、言語表現そのものに見出すことができる。7.従って己れの世界観の限界を自覚しながら現実描写に、社会実現に徹すれば徹する程文学的な空想性,屈折が生ずるところにユートピアの逆説的本質が存する。なお次年度は、文学史上の各時代特有のテーマを考慮しつつ、個々の文学作品を取り上げ、ユートピア像及びユートピア的想像力を探究することが中心課題となろう。
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