研究課題
本年度は所定の実施計画にもとづき、各自が役割分担に属する主要思想家の著作の研究を進め、その思想家ないし思想家群の主張を把握することにつとめた。その際、研究代表者を編者として公刊された『自由貿易と保護主義』(法政大学出版局,1985年)での各分担者の研究を前提として、それをいかに深化し、体系化するかが目標とされた。すなわち杉山は重商主義期を担当し、津田は18-19世紀の自由貿易問題の英仏間における諸相を究明し、杉原はミルやウェイクフィールドを中心に自由主義と自由貿易帝国主義との方向づけを試み、熊谷は生産力の圧倒的優位を基礎として展開されたマンチェスター学派の諸論を追求し、服部は農業利益が自由・保護問題にどう対応させねばならなかったかを課題とし、西沢は中小産業的バーミンガム派の保護主義指向を明かにし、玉置は自由貿易主義さらには自由貿易帝国主義とイギリス金融制度とがいかにかかわるかの特徴的性格ととりくみ、小林はステュアートにさかのぼりつつ、全体の方法論的経路の究明をも念頭におき、自由・保護貿易のほかに、国家と経済コントロールの問題、その財政論的推移の検討につとめた。かかる歴史的・資料的研究は即効的成果の結実を期待しがたいが、各自の研究を、全体的課題とのかかわりにおいて、相互認識によって、深化することを目的として、昭和61年11月24日に京都で全担当者出席のもとに研究会を開いた。その際西沢がイギリス歴史学派の主張を中間報告し、それを手がかりに討論がかわされた。ついで昭和62年2月1日には、東京で、同じく全担当者出席のもとに、研究会を開き、服部が貴族的土地所有と経済学、玉置が英仏銀行制度をモデルとした初期日本金融を試論的に展開し、これに依拠しつつ討論をかさね、各出席者それぞれ課題全体への関心と理解を深めることができた。その具体化は次期に譲られる。
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