研究課題
クエイサイクリスタル(準結晶)は、従来の結晶学では存在しないとされていた対称性を持ち、1984年秋にその発見が報じられて以来、急速に発展しつつある新しい固体の研究分野である。本研究班の研究会は、研究組織が作られた後、準結晶に興味を持ち活溌な研究を始めた多くの人々にも參加を求めて、昭和61年12月4〜6日に開催された。(研究会報告:物性研究、1987年4月号)本年度の成果は次の通りである。1.幾何学的構造と原子配置3次元準結晶の大域的な構造の制約(ペンローズ構造)のもとで、ミクロな原子配置については、ようやく、一致するきざしが出て来たように思われる。一方、高分解能電顕や収束電子回析などの実験からは、準結晶構造における欠陥(フェイゾン,転位)や、対称性のくずれの存在が示された。これらは、準結晶の成長機構を考えるのに重要な因子となるであろう。2.電子状態一次元準周期系の電子状態の特徴(エネルギースペクトルにおけるギャップの分布則、自己相似性など)が数値的に、あるいは部分的に解析的な扱いをまぜて、調べられて来ているが、同時に、フィボナッチ列が結晶に周期的変調をつぎつぎに与えることにより作られることが見出され、それにもとずいて、特異な電子状態の直観的理解が与えられた。さらに、2次元系の電子状態、特異な電子状態に伴う物性が調べられた。3.試料作成・物性試料の熱力学的安定性、4元化によるひずみの小さい試料の作成など良い試料をつくる努力と共に、磁性、電気的性質のアモルファス相や結晶相との比較などが研究された。
すべて その他
すべて 文献書誌 (6件)