研究概要 |
わが国の南極観測事業の一環として遂行されてきた「東クイーンモードランド雪氷研究計画」(5ヶ年計画)は本年度をもって終了した。その結果、東南極に関する貴重かつ多量のデータや試料がもたらされた。たとえば、みずほ基地を含む広大な領域で長期に亘る堆積の中断現象が生じており、氷床の涵養が一様ではないことや、白瀬氷河流域の氷床が雪崩現象を越こしている可能性が示唆されたことなどである。 氷床表面における堆積現象と氷床の動力学的変動を、上記5ヶ年計画で得られたデータや試料をより深く解析するとともに、その相互の関連を総合的に解明して、過去から未来へと続く氷床像を明らかにすることが本研究の主目的である。初年度に当る本年度では、氷床表面の堆積環境や氷床流動データの解析とともに、みずほ基地で採取された700mの氷コアの解析に重点をおいた。 この中で、1.堆積の中断が数十キロのオーダーで氷床表面上に交互に生じており、氷床の堆積に一種の脈動が生じていること,2.氷床流の中流付近から流速が急激に増加していること,3.この現象が数千年以前頃にドラスティックに生じた可能性が強いこと,4.氷床の高度がこれに同期して急速に低下しはじめたこと,5.6〜7千前以前頃、大気環境に大きな変動が生じていたこと,などの成果が挙った。」来年度は、これらの解析をさらに進めるとともに、その成果をスイスで開催予定の氷コアの国際研究集会や西独で開かれる南極雪氷学のシンポジウムで発表し、諸外国の観測結果と比較検討する予定である。年度内には、氷床の堆積環境変動と動力学的挙動との間の有機的な相互関係を総合的に検討する研究集会を催し、科学研究費総合研究(A)成果報告書を刊行する。
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