研究概要 |
トンネルの設計・施工の概念はNATM(New Austrian Tunneling Method)の出現によって大きな変革を受けた。NATMの本質は、吹付けコンクリートとロックボルトを単に支保部材として利用することにあるのではなく、調査,設計,施工,施工管理の各過程を総合的・有機的に管理,運用していくことにある。この新しいトンネルの設計・施工の考え方は、工学者・技術者の経験を総合しながら、かつ極めて合理的であり、したがってエキスパートシステムの構築に適している。 エキスパートシステムを作成するためには、現状分析を極めて精密に実施する必要がある。殊に、本年度では土木学会の山岳トンネル標準示方書が全面的に改訂され、NATMが標準工法と位置付けられたために、その詳細な分析から作業を開始した。しかしながら、当該示方書は概説的であり、具体的な設計・施工の手順が示されていない。このため、委員会のメンバーが分坦して、主として各種の設計手法の具体的な手順・入力データを調べ上げると共に、各種手法相互の位置付けを明らかにし、システムとして組み込むべきルーチンの分析を終えた。委員会は分坦毎のワーキンググループの会合も併せて10回程開催され、最終的に設計システムに関する報告書が取りまとめられた。また,スーパーミニコンピュータDEC/Station【II】システムとエキスパート構築システムOPS5も導入されたため、上記の分析結果に基づいたシステム作成を順次進めているところである。 トンネルの設計および施工は、極めて広範囲の経験が総合した,そしてまたその理論的な統合の計られていない分野であることが、本年度の分析作業を通じて更めて痛感させられた。裏返せばこれは人工知能的な手法なくしてトンネル設計施工のシステム化が不可能であることを示していよう。62年度はプロトタイプシステムが作成される。
|