研究概要 |
トンネルの設計の概念はNATM(New Austrian Tunneling Method)の出現によって大きな変革を受け, 施工においても導入する機械, 設備, 作業手順等が一新された. NATMの本質は, 調査ー設計ー施工の各過程を有機的に関連させて管理運用していくことにある. NATMの設計施工に対する考え方は工学者・技術者の経験を総合していながら, かつ極めて論理的である. 土木学会でもNATMを標準工法として位置付けており, NATMによるトンネル施工は増加の一途を辿るものと考えられる. NATMがより経済的かつ合理的なトンネル施工法として発展していくためには, これまでの, そして今後の経験を蓄積し, 設計法の妥当性検証, 設計変更手順の確立, 適切な管理値の設定法の開発, より有効な理論, 数値解析法の開発等を計る必要がある. そのためには, 総合化されたNATMの設計施工およびデータ収集システムの構築が必要と考えられる. このようなシステムは経験的なものを取り込むと同時に, 常に最新の技術を吸収して発展していく機構が必要であり, 人工知能の概念を用いたエキスパートシステムがこれに適している. 本年度は61年度に実施した作業分析に基づいて, DEC/VAX station IIシステム上でエキスパート構築シェルOPS5によってNATM設計用第一期システムを構築した. 現在までに作成されたシステムは, ルール数で約500, プログラムステップで約10,000行(内FORTRAN部2,000行)である. また, このエキスパートシステムに入力するデータを既存のトンネル施工データから参照するために, マイクロコンピュータ(PC9800)上でつぎの3種のデータベースシステムを構築し, 各種の文献よりデータを入力した:(1)トンネルデータベース(既存のトンネルの概要), (2)支保データベース, (3)地質データベース. 次年度は, 現場データによって本システムの確証作業を実施し, システムの改良を計るものである.
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