来る半世紀の気候変動とわが国の食糧・エネルギー・水の予想に関する研究

1986 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 61302083
• 研究機関: 筑波大学
• 研究代表者: 吉野 正敏 筑大, 地球科学系, 教授 (60015956)
• 研究分担者: 山川 修治 筑波大学, 地球科学系, 助手 (00183674) ; 安成 哲三 筑波大学, 地球科学系, 講師 (80115956) ; 小林 守 筑波大学, 地球科学系, 講師 (10153644) ; 西沢 利栄 筑波大学, 地球科学系, 教授 (90062512) ; 河村 武 筑波大学, 地球科学系, 教授 (20111362)
• キーワード: 気候変動 / 日本 / 食糧 / エネルギー / 水 / 予想

研究概要

二酸化炭素(【CO_2】)が倍増するのは2030年ごろと考えられ、全地球規模では、1.5〜4.5℃昇温が見込まれている。本研究では、まずシナリオとして、年平均気温では2℃の昇温とし、地域的なコントラストをつける場合には、東北日本では2.5℃、西南日本では1.5℃とする。季節的なコントラストをつける場合には冬季は2.5℃、夏季は1.5℃、他の季節は2.0℃とする。降水量に大きな変化はないが、梅雨季の雨量は西南日本で20〜30%増加し、他の地域はほぼ現状通りとするとした。このような気侯状態の下で、どのような現象が食糧・エネルギー・水などに現われるかを研究した。研究組識は4本の柱とした。第1は気侯状態の変化の推定で、アジアの冬と夏の季節風の変化、主要気圧配置型の出現頻度の変化、日本の気圧・気温・降水量などの変化、東北日本のやませや西南日本における干ばつの出現頻度や影響範囲の変化、都市のヒートアイランドの変化などを取りあげた。第2は、農林水産物生産高の推定で、気侯-米作モデルによる推定、北海道や東北地方の主要作物の収量変化東北海区における水産資源の変化などを取りあげた。第3は、エネルギー消費と需要の推定で、都市におけるエネルギー、ヒートアイランドの形態や強度の変化を取りあげた。第4は水資源・水需要の推定で、日本における冬季の積雪深・積雪水量の変化、暖候季の水需要の変化、西南日本や南西諸島における水資源や干ばつの変化を取りあげた。2〜3の興味ある結果は次の通りである。昇温によって冬季の暖房用エネルギーの使用量は減り夏季の冷房用エネルギーの使用量は増加する。しかし、冬日日数減少への影響は小さく熱帯夜日数の増加の効果は大きい。西南日本では、水不足量はシナリオにかかわらず、現実には沖永良部(10月)、石垣(7月)に出現する。冬型気圧配置の出現日数は気温偏差が+2.5℃のときには16日減少している。一方、夏型の日数は14日増大する。

研究成果

• [文献書誌] Yoshino,M;Yamakawa,S.: Climatological Notes. 34. 1-37 (1985)
• [文献書誌] Yoshino,M.;Horie,T.;Seino,H.;Tsujii,H.;Uchijima,T.;Uchijima,Z.: The impact of climatic variations in agriculture. 1. 1-131 (1987)
• [文献書誌] 安成哲三: 天気. 33. 507-513 (1986)
• [文献書誌] Yasunari,T.: J.Meteorological Society of Japan. 65. (1987)
• [文献書誌] 前島郁雄: Geogr.Reports Tokyo Metropol.Univ.23. (1988)
• [文献書誌] 中島暢太郎: 昭和61年度 日本雪氷学会秋期大会講演予稿集. 290 (1986)
• [文献書誌] Yoshino,M.M.Yasunari,T.: "Chap.8:Climatic Anomalies of El Ni【n!〜】o and anti-El Ni【n!〜】o Years and their Socio-economic Impacts in Japan.in"The Societal Impacts Associated with the 1982-83 Climate anomalies"" National Center for Atmospheric Research &UNEP, 105 (1987)
• [文献書誌] Tsujii,H.et al.: ""The Effect of Climatic Variations on Agriculture in Japan."" Reidel,Dordrecht,The Netherland, 136 (1987)