研究概要 |
樹木の冬芽の休眠導入および解除条件についてはポプラで, 成育と日長生態的分布特性についてはタブノキを中心に実験, 調査を行った. ポプラは典型的な短日植物で, 温帯地方に分布する樹木に, 広くみられる生長, 休眠の解析に適する材料である. ポプラによる休眠状態の変化をみると, 休眠導入は短日, 休眠解除は低温によって誘導される. この休眠導入時における暗期の温度は, 重要な役割をはたしており, 高温(30°〜35°C), 低温(10°〜15°C)は, その効果を弱める働きをする. このようなことが, 信州カラマツを北海道に移すと, 生長停止が遅れて, 霜害をもたらすことになると考えられる. また冬期の低温によって休眠が解除され, 冬芽の中で生長が開始される時(2月下旬)が耐凍性の低下の時期にあたり, 春期の霜害の発生と重要な関係があり, 生育地域の限界を決めかねない問題である. タブノキについては, 西表から青森にかけて各地で採集した種子から育てた苗木をもちいて, 生活パターンの違いを明らかにするため, 実験を行った. 東北, 関東, 四国のタブノキは, 休眠に入って, その休眠が低温によって解除されているように考えられる. しかし, 沖縄産タブノキは, 頂芽は休眠に入らないと考えられる. ただ, 沖縄タブノキは, 18°Cでの開芽が28°Cでよりも, 速く高率であったことで, 開芽適温が低い温度にあると考えられ, これが三重大学構内で冬期に開芽する原因とみられる. また東北, 千葉産タブノキは休眠に入るとみられるが, 短日条件下でも, 周期的生長をするので, 休眠導入条件は単純ではないようだ. 温帯地方に分布する樹木でも, その生活様式特に越冬体制にはかなり相違があり, 亜熱帯に分布する樹木と全く休眠の性質を異なるもの(ポプラ型), と休眠の深さが幾分異なるもの(タブノキ型)とが共存しているとみられ, タブノキ型は温帯地方には, まだ安定した森林の成立はむずかしい点もあり, 取り扱いには注意を要する.
|