研究概要 |
ボツリヌス菌E型毒素に対するモノクローナル抗体を作製し、毒素分子の構造を解析した。毒素は少なくとも3種のドメイン(L,H-1,H-2)から構成されていることがわかった。アミノ酸配列から、LはN末端、H-2はC末端に位置し、さらに電気泳動,イムノブロッテング法による解析で、重鎖と軽鎖を結合しているSS結合は、LとH-1間に存在することが明らかになった。脳シナプトゾームを用いた成績から、毒素分子の神経細胞膜への結合はH-2が司ると考えられた。レセプターの一つと考えられているガングリオシドへの結合を解析した結果、H-2は糖鎖と、H-2は疎水部分であるセラミドと結合することがわかり、毒素の膜への侵入過程で、H-1は重要な働きをすることが予想できた。現在、他の型の毒素についても、同様の解析を進めている。ウェルシュ菌エンテロトキシンの有する細胞毒性を11種の培養細胞を用いて調べた。その結果、細胞は毒素に対する感受性の有無で2群に分類できた。感受性細胞であるVero細胞に対するエンテロトキシンの結合を解析したところ、細胞のレセプターは1種であることがわかった。エンテロトキシン耐性細胞はレセプターを有していなかった。モノクローナル抗体による解析から、エンテロトキシン分子には、レセプター結合部位と活性発現部位が異なることが示唆された。エロモナスは、物理化学的および免疫学的性状の異なる2種のヘモリジンを産生することがわかった。2種のヘモリジンは共にエンテロトキシン活性を有していた。ラット,ウサギ,モルモット赤血球が高い感受性を示した。ヘモリジンの赤血球膜への結合は、ジアシル型リン脂質、特に酸性リン脂質を介して起こると考えられた。ブドウ球菌エンテロトキシンに対するモノクローナル抗体を作製し、すべての型の毒素に反応する抗体を得た。現在、エンテロトキシン分子の共通抗原部位の検査を実施している。
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