研究概要 |
ボツリヌス菌G型毒素の精製に世界で初めて成功した. AからG型の毒素はすべて共通の分子構造を持っていることがわかった. 動物体内では, 毒素の生物活性は速かに減衰するが, 抗原活性は長期間残存することを実験的に証明し, 新しい中毒診断法の考う方を提案した. 毒素の分子構造に関して, 従来提唱していたL・Hー1・Hー2の3フラグメント構造を, 各フラグメントを精製することにより立証した. Hー2は神経細胞膜と結合し, Hー1は膜内疎水性部分と相互作用することを明らかにした. ウェルシュ菌エンテロトキシンを, 2ーニトロー5ーチオシアノ安息香酸で切断し, レセプターへの結合能は持つが, 毒性は無いフラグメントを単離した. このことは, 毒素が作用発現に関する部位とレセプター結合部位を毒素分子上の別々の部位に持つことを意味している. エロモナスが産生する2種類のヘモリジンに対し, モノクローナル抗体を作製した. 2種に共通に, あるいはそれぞれに特異的に反応する抗体を得た. ヘモリジンの溶血作用と下痢作用を同時に中和するモノクローナル抗体が得られ, 両作用がヘモリジン分子上の同一部位によって担われていることがわかった. エロモナスは, ヘモリジンを低毒性型として産生し, 蛋白分解酵素の作用で, ヘモリジンが高毒性型に活性化される現象を発見した. セレウス菌下痢毒に対するモノクローナル抗体を各種作製した. 毒素分子上の異なる抗原決定基を認識するモノクローナル抗体を多数作製したが, いずれも毒素の下痢作用を中和できなかった. ブドウ球菌エンチロトキシンに対してモノクローナル抗体の作製を試み, エシテロトキシンAとEに反応する抗体を得た. これをクロマト担体に結合させ, 菌の培養上清を出発材料として1ステップで毒素を精製する方法を開発した.
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