研究概要 |
研究代表者および研究分担者の各個的研究はそれぞれ目的に沿って実績をあげ, 関係学会や関係学術誌に公表されつつある. 昭和61年度において持記すべきことは, 研究代表者相沢 幹が会長となり分担者の一人関口 進が副会長となり, 他の研究分担者が主催団体の要員となって第3回アジア・オセアニア組織適合性ワークショップ・コンフェレンス(BAOHWS)を札幌市に於て6月27日〜7月1日の5日間開催して盛会裡に終了しその記録が「HLA in Asia Oceania 1986」として公刊されたことである. 研究目的別に本年度の成果を述べてゆくと以下の如くである. (1)HLAクラスII抗原の血清学的解析では, HLAーDR2, DR4, DQW1の日本人におけるサブタイプの可能性, およびDQWaと仮称する新たなDQ抗原の存在が示唆された. またDP抗原が血清学的に同定可能であることが示唆された. (2)免疫化学的解析ではDR4β鎖がサブタイプ毎に互いに異なっていること, またその内のひとつは日本人に特徴的であることが確認された. (3)分子遺伝学的解析ではDQw1β遺伝子のクローニングおよびその構造決定がおこなわれ白人由来のそれよりエクソンが一つ多いことが明らかにされた. また遺伝子レベルでのHLAタイピングとしてサザンブロット法による制限酵素断片長多型解析(RFLP)の有用性が確認された. (4)免疫応答におけるクラスII抗原の機能としてDR抗原は補助T細胞の, DQ抗原は抑制性T細胞の誘導に関与することが解り, クラスII抗原の機能的分化が示唆された. (5)疾患との相関では各種疾患とHLA相関が明らかにされた他, RFLP解析でナルコレプシー患者のDQw1β鎖が健常人と異なっている可能性が示唆された. (6)3AOHWSにおける各国との共同研究によりHLA抗原が人類学的指標として極めて有効であることが明らかにされた.
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