研究概要 |
Zellweger症候群は、細胞内小器官であるペルオキシソーム構造の欠損症である。ペルオキシソームに局在する極長長鎖脂肪酸代謝に障害がある事から、ペルオキシソーム特有のβ-酸化系酵素(acyl-CoA oxidase,bifunctional protein,3-ketoacyl-CoA thiolase)と不飽和脂肪酸代謝に関与する2,4-dienoyl CoA reductaseについて検討した。いずれの酵素も活性をほとんど認めず、Western blot法を用いて各酵素蛋白が検出できなかった。ただし3-Ketoacyl-CoA thiolaseはその前駆体と思われる酵素蛋白が検出された。そこで肝からmRNAを抽出し、無細胞蛋白合成系で翻訳を行なわせると、各酵素蛋白は合成される事がわかった。また免疫組織化学的分析によりペルオキシソーム構造が存在しない患者肝細胞の細胞質に酵素蛋白を検出できる事から、合成された酵素蛋白がペルオキシソームに局在できず、細胞質にとどまり蛋白分解酵素で分解される事が推定された。そこで、ペルオキシソーム形成自体の異常が本疾患の病因と考えられ、ペルオキシソーム膜タンパク質について解析を行なった。膜蛋白として分子量70KDa(MP-70KDa),26KDa(MP-26KDa)と22KDa(MP-22KDa)の3種類のポリクローナル抗体をウサギで作製しWestern blotに用いた。常法に従い膜画分を調整し、検討すると患者肝ではMP-70KDa,MP-22KDaが検出されなかった。MP-26KDaは微量であったが、感度を増す事によりやはり検出されない事がわかった。 今後、患者皮膚線維芽細胞とオランダより供与された患者皮膚線維芽細胞を用いて、膜蛋白合成能の有無について検討し、ペルオキシソーム形成とZellweger症候群の病因について検討を加えていきたい。あわせて、生出前診断についてもその方法を検討するつもりである。
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