歯内一歯周病変の成立機序ならびに治療法に関する研究

1988 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 61304054
• 研究機関: 長崎大学
• 研究代表者: 加藤 伊八 長崎大学, 歯学部, 教授 (30005087)
• 研究分担者: 村山 洋二 岡山大学, 歯学部, 教授 (50029972) ; 石川 烈 東京医科歯科大学, 歯学部, 教授 (10014151) ; 砂田 今男 東京医科歯科大学, 歯学部, 教授 (50005013) ; 上野 和之 岩手医科大学, 歯学部, 教授 (00048307) ; 加藤 熈 北海道大学, 歯学部, 教授 (60001020)
• キーワード: 歯内 / 歯周病変 / 根分岐部病変 / 副根管 / 髄管 / 歯根破折 / 穿孔 / 細菌叢

研究概要

昭和63年度は、前年度からの研究を継続的に行うとともに、新たに次の研究成果が得られた。1)歯内・歯周病変の病態解析:本病変を有する抜去歯の病理組織学的観察を行い、臨床所見との比較検討を行った。その結果、退行性変化(萎縮、石灰化)、炎症性変化、感染歯髄ならびに歯髄壊死(壊疽)などが観察された。これらの変化は歯髄の部位によって一様ではなく、また複根歯では、根によって異なっていた。また本病変の病態と歯肉溝滲出液中の蛋白分解酵素、特にCathepsin B、H、Lおよびエラスターゼの活性値との関連性を調べた。現在根管からの滲出液についても同様の検索を検討中である。2)副根管の存在の診断法の確立に関する研究:被検歯の歯髄腔と歯周組織の間の電気抵抗値を測定することによって副根管の有無を診断する方法に関する研究を継続している。根管内をH_2O_2およびNaOClで処理、超音波洗滌することによって、模型実験の段階であるか、診断が可能であることが分かった。3)本病変の細菌叢に関する研究:本病変を有する症例の歯周ポケット内および根管内の細菌叢の特徴はすでに明らかにすることが出来た。本年度は治療経過と、歯周ポケット内および根管内の細菌叢、特に嫌気性菌の動態を検索した。今回の治療処置は歯内治療のみに限定したが、1回の根管治療で、歯周ポケットおよび動揺度の程度の変化が観察され、根管内は無菌状態となった。また歯周ポケット内の総菌数の変化は認められなかったが、細菌叢の変化が観察された。4)本病変の治療に関する研究:ラットの歯周組織に実験的損傷を加え、歯周組織の創傷治癒と再生に関する実験を行い、血液凝固因子であるFXIIIは歯周組織の再生に有効であり、治癒が促進されることがわかった。また本病変の臨床例の治療経過についても検討を行った。

研究成果

• [文献書誌] 上野和之: 日本臨床歯周病談話会誌. 4. 2-15 (1986)
• [文献書誌] 栗生雄二: 日本歯科保存学会雑誌. 30. 172-180 (1987)
• [文献書誌] 梅田誠: 口腔病学会雑誌. 54. 612 (1987)
• [文献書誌] 佐藤仁哉: 日本歯内療法協会雑誌. 8. 51-52 (1987)
• [文献書誌] 吉川亮: 日本歯周病学会会誌. 29. 1132-1144 (1987)
• [文献書誌] 上野和之: ザ・クインテッセンス別冊/歯科における生体新素材の応用. 167-179 (1987)
• [文献書誌] 栗生雄二: 日本歯科保存学会雑誌. 31. 269-274 (1988)
• [文献書誌] 小林芳友: 日本歯科保存学会雑誌. 31. 248-258 (1988)
• [文献書誌] 穴田高: 日本歯科保存学会雑誌. 31. 782-794 (1988)
• [文献書誌] 熊谷敦史: Dental Diamond. 13. 28-35 (1988)
• [文献書誌] 工藤純一: 日本歯科保存学会雑誌. 32. 201-213 (1988)
• [文献書誌] 國松和司: 炎症. 9. (1989)
• [文献書誌] 山本健二: 炎症. 9. (1989)
• [文献書誌] 加藤熈: 日本歯周病学会会誌. 31. (1989)
• [文献書誌] 加藤伊八: "歯内一歯周病変の治療" デンタルダイヤモンド社, 245-90 99 (1988)
• [文献書誌] Hiroshi Kato.: "Recent Advances in Clinical Periodontology" Elsevier Science Publisher, 35-42 (1988)