Naポンプの分子機構

1986 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 61304065
• 研究機関: 杏林大学
• 研究代表者: 松井 英男 杏林大, 医学部, 教授 (50086485)
• 研究分担者: 谷口 和弥 北海道大学, 歯学部, 助教授 (40028204) ; 原 諭吉 東京医科歯科大学, 医学部, 助教授 (00092429) ; 中尾 真 東京医科歯科大学, 医学部, 教授 (10013781) ; 川村 越 産業医科大学, 教授 (00049066) ; 長野 敬 自治医科大学, 教授 (70048940)
• キーワード: ナトリウムポンプ / Na,K-ATPase / 能動輸送 / カリウムイオン / コンホメーション変化 / 一次構造 / ウアバイン / 膜蛋白質

研究概要

1.構造面の研究:先に電気エイ【Na^+】,【K^+】-【ATP_(ase)】の鎖の一次構造が決定されたが、本年度はβ鎖一次構造の決定と、異種生物への応用としてヒト酵素のα,β両鎖の構造決定がなされた(長野,川村)。さらにウアバイン低感受性のラットでα鎖及び脳型アイソザイムのα(+)鎖のcDNAクローニングにも成功しアミノ酸配列の決定が行われたが(中尾,原)、米国のShullらと競合するところとなった。一次構造の決定に関連し、活性部位の一部としてのFSBAラベル部位の局在が明らかになった(長野)。高次構造レベルの研究では可溶化酵素を膜結合酵素に匹敵する比活性を持つ状態で高速液クロ分離することに成功した(林,松井)。
2.反応機構面の研究:酵素の立体構造変化に関与するBIPM結合の部位,ATPに対する低親和性をとる原因,及び3種の構造上異なった【E_1】Pの出現が示された(谷口)。【KE_2】-→Na【E_1】への変化におけるATPの役割(松井)や、カチオン結合を阻害する有機塩基や2価金属イオンの【E_2】Pに対する影響など(福島)が明らかにされた。またウアバイン作用の解明に必須な心臓【Na^+】,【K^+】-【ATP_(ase)】の精製法が開発された(渡辺)。3.輸送機能面の研究:再構成リポソームの研究で、【H^+】が【Na^+】の代わりに輸送されることが明らかにされた(原,中尾)。細胞レベルの研究では、インスリン投与により筋細胞で既存の輸送活性より【Na^+】親和性の高い新しい輸送活性が発現することが明らかにされた(北里)。さらに脳の初代培養神経細胞では細胞分化にともない、α型の他にα(+)型(脳型)の酵素が発現し、このα(+)型ポンプが優先的に輸送活性を示すことが認められた(松井)。一方小腸刷子縁膜には、【Na^+】ポンプによって作られた【Na^+】,【H^+】勾配を使う、【Na^+】or【H^+】/糖,【Na^+】/アミノ酸,および【H^+】/ペプチドの三つの共輸送担体が存在することが明確になった(星)。

研究成果

• [文献書誌] Haruo Homareda: J.Biochem.101. 791-795 (1987)
• [文献書誌] Kazuya Taniguchi: J.Biol.Chem.261. 3272-3281 (1986)
• [文献書誌] Kazuya Taniguchi: J.Biochem.100. 1231-1239 (1986)
• [文献書誌] Momohiko Nagai: J.Biol.Chem.261. 213197-1320 (1986)
• [文献書誌] Kiyoshi Kawakami: Nucleic Acids Research. 14. 2833-2844 (1986)
• [文献書誌] Kiyoshi Kawakami: J.Biochem.100. 389-397 (1986)
• [文献書誌] Kei Nagano: Viva Origino. 15. 29-39 (1986)
• [文献書誌] Shunsuke Noguchi: FEBS Letters. 194. 315-320 (1986)
• [文献書誌] Toshiko Ohta: Proc.Natl.Acad.Sci.,USA. 83. 2071-2075 (1986)
• [文献書誌] Toshiko Ohta: FEBS Latters. 204. 297-301 (1986)
• [文献書誌] Takeshi Hoshi: Biochim.Biophys.Acta. (1987)
• [文献書誌] Yoshio Maruyama: Pfl【u!¨】gers Arch.406. 563-567 (1986)
• [文献書誌] Yukichi Hara: J.Biochem.99. 531-539 (1986)
• [文献書誌] Yukichi Hara: J.Biol.Chem.261. 812655-1265 (1986)
• [文献書誌] Hideaki Nagamune: J.Biochem.99. 1613-1624 (1986)
• [文献書誌] N.Kumazawa: Biochem.Biophys.Res.Commun.136. 767-772 (1986)
• [文献書誌] Mariko Kanbe: Biochem.Biophys.Res.Commun.134. 609-616 (1986)
• [文献書誌] Toshio Takagi: J.Biochem.101. 805-811 (1987)
• [文献書誌] Hideo Matsui;(S.Fleisher & B.Fleisher eds.): "Measurement of Binding of 【Na^+】,【K^+】-ATPase by Centrifugation Method.In Methods in Enzymology" Academic press Inc., (1987)
• [文献書誌] Takeshi Hoshi;(F.Alvarado & C.H.Van Os eds.): "Proton-coupled transport of dipeptedes across renal and intestinal brush border membrans.In Ion Gradient-coupled Transport" Elsevier Science Publishers, 183-191 (1986)