研究概要 |
1.構造面の研究:ラット脳でα鎖,α(+)鎖の何れとも異なるαIII鎖のcDNAが発見され, 一次構造が決定された(中尾,原).生合成時のα,β各鎖の膜への組込みが研究され, 蛋白合成後各鎖は独自に膜に組込まれることが示された(長野,松井).さらに,α鎖,β鎖のcDNAより各mRNAを合成し,Xenopus oocyteに注射し,機能活性をもったNa^+,K^+ーATPaseを発現させることに成功した(川村).その際,α鎖の正しい膜への組込みと活性発現にはβ鎖の共存が必要であった. 高次構造レベルの研究では,HPLCを組込んだ低角レーザー光散乱法により可溶化Na^+,K^+ーATPaseの分子量を測定し,turnover時のコンホメーション変化とプロトマー間の相互作用の変化の対応が示された(林,松井). 2.反応機構面の研究:酵素の各反応中間体で,BIPM,FITC,DACM等の各種外部蛍光,Tryp内部蛍光及び光散乱を測定し,ポンプによるエネルギー変換の中心問題である酵素のコンホメーション変化が解析された(谷口).また,アミノ化合物による阻害の測定から,カチオン結合部位の様相が考察された(福島).ラットの心筋Na^+,K^+ーATPaseの精製法が開発され, 心臓におけるウアバイン高・低感受性両アイソザイムが研究された(渡辺). 3.輸送機能面の研究:再構成ベシクルでNaポンプによるH^+の輸送が研究された(原,中尾).カエル骨格筋でのインスリン作用によるNa輸送活性の増大は,Na^+,K^+ーATPaseの細胞内部より形質膜への移動によるポンプ数の増加によることが明らかにされた(北里).cDNAによりmRNAの検索で,α,α(+),αIII各鎖の脳,心筋,腎等における局在と細胞培養に伴う変化が解析された(松井,原,中尾).Na^+部位におけるH^+の代行性に関連して,小腸刷子緑の,Na^+のみ,H^+のみ,およびNa^+とH^+双方に親和性をもつ三種類のカチオン共輸送系が比較検討された(星).
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