高齢者の暑熱適応

1988 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 61304072
• 研究機関: 愛知医科大学
• 研究代表者: 小川 徳雄 愛知医科大学, 医学部, 教授 (50065520)
• 研究分担者: 中山 昭雄 大阪大学, 医学部, 教授 (80022763) ; 佐々木 隆 熊本大学, 熱帯医学研究所, 教授 (00022682) ; 森本 武利 京都府立医科大学, 医学部, 教授 (30079694) ; 白木 啓三 産業医科大学, 医学部, 教授 (00035453)
• キーワード: 高齢者 / 暑熱適応 / 発汗機能 / 循環機能 / 体温 / 日周変動 / 季節差 / 体力

研究概要

本年度は最終年で、本来まとめの段階にあるべきであるが、初年度の分担研究の大半が予備実験に費やされたこともあって、なお多くの分担課題で積極的な実験が進められ、昭和63年11月25日に名古屋における班会議で報告された。堀は下肢温浴法による高齢者の発汗機能を夏と冬について調べ、先にえられた若年者のデータと比較し、発汗量、発汗潜時、汗のNa濃度、中枢温上昇度等の季節差が、若年者に劣らないことを認めた。小川らは最高発汗量、汗腺訓練効果、発汗能の季節変化を、男女高齢者及び若年者について比較し、暑熱順化に伴う汗腺活動の適応性変化が、少なくとも男性においては、加齢に伴って低下する傾向にあることを認め、それに中枢性・末梢性変化が関わるとの示唆をえた。白木は常温及び高温において臥位からhead-up tiltしたときの反応を高齢者と若年者で比較し、高齢者では前腕血流反応及び血管コンダクタンスが低下し、高温では末梢への血流の制御機能の低下に基づく熱放散機能減退のため高体温になることを示した。小坂らは甲状腺などの内分泌機能と発汗能との関係を、甲状腺機能異常者及び健康者の運動時について検討した。中川らは気候風土の異なる10地域の高齢者3100人と大学生1100人につき最も暑さの厳しい時期にアンケート調査を実施し、一般に高齢者では暑さに対する自覚的な抵抗力が強く、暑さによる疲れやだるさを訴えるものの割合が少ないこと、またそれに地方性があり、生活習慣が関わることを認めた。佐々木は高齢者の体温の日周変動を調べ、早朝から日中にかけて季節差が現われ、若年者に比べ、早朝の体温上昇及び夕刻からの下降が早朝に出現することを認めた。広重は高齢者の体温の24時間連続記録を試み、データを集めつつある。森本は183名の健康高齢者に高齢者向きに工夫した体力テストを実施し、比較的低レベルの運動も運動習慣のあることが体力の低下を防ぐのに有効であることを示した。

研究成果

• [文献書誌] 堀清記: 体力科学. 37. 341 (1988)
• [文献書誌] 辻田純二: 日本生気象学会雑誌. 25(増刊号). 20 (1988)
• [文献書誌] 堀清記: 「高齢者の暑熱適応」昭和63年度第1回班会議研究報告集. 11-12 (1988)
• [文献書誌] Ohnishi,Norikazu: Journal of Physiological Society of Japan. 50. 612 (1988)
• [文献書誌] 大西範和: 体力科学. 37. 604 (1988)
• [文献書誌] 大西範和: 第12回人間-熱環境シンポジウム報告集. 23-25 (1988)
• [文献書誌] 小川徳雄: 「高齢者の暑熱適応」昭和63年度第1回班会議研究報告集. 17-19 (1988)
• [文献書誌] Ohnishi,Norikazu: Abstracts,IUPS Satellite Symposium,Thermal Physiology,Tromso. (1989)
• [文献書誌] Sagawa,Sueko: Journal of Gerontology. 43. M1-M8 (1988)
• [文献書誌] Tajima,Fumihiro: American Journal of physiology. 254. R977-R983 (1988)
• [文献書誌] 白木啓三: 「高齢者の暑熱適応」昭和63年度第1回班会議研究報告集. 8-9 (1988)
• [文献書誌] Hirata,Kozo: European Journal of Applied Physiology. 57. 735-739 (1988)
• [文献書誌] Matsumoto,Takao: Tropical Medicine. 30. 225-231 (1988)
• [文献書誌] Matsumoto,Takao: Tropical Medicaine. 30. 257-260 (1988)
• [文献書誌] 松本孝朗: 「高齢者の暑熱適応」昭和63年度第1回班会議研究報告集. 13-16 (1988)
• [文献書誌] 松本孝朗: 「高齢者の暑熱適応」昭和63年度第1回班会議研究報告集補遺. 1-3 (1988)
• [文献書誌] 松本孝朗: 体力研究. 69. (1988)
• [文献書誌] 中山昭雄: 「高齢者の暑熱適応」昭和63年度第1回班会議研究報告集. 5-7 (1988)
• [文献書誌] 久保博子: 日本家政学会第41回大会予稿集. (1989)
• [文献書誌] 梁瀬度子: 日本家政学会第41回大会予稿集. (1989)
• [文献書誌] 佐々木隆: 第14回人類働態学会西日本地方会抄録集. (1988)
• [文献書誌] 佐々木隆: 「高齢者の暑熱適応」昭和63年度第1回班会議研究報告集. 10 (1988)
• [文献書誌] 広重力: 「高齢者の暑熱適応」昭和63年度第1回班会議研究報告集補遺. 4 (1988)
• [文献書誌] 森本武利: 大阪ガスグループ福祉財団研究調査報告集. 1. 123-128 (1988)
• [文献書誌] Hirakawa,Kazufumi: Abstracts,Symposium of International Council for Physical Fitness Research,Oasaka. 31 (1988)
• [文献書誌] Kimura,Misaka: Abstracts,Symposium of International Council for Physical Fitness Research,Osaka. 37 (1988)
• [文献書誌] 木村みさか: 体力科学. 37. 637 (1988)
• [文献書誌] 森本武利: 「高齢者の暑熱適応」昭和63年度第1回班会議研究報告集. 2-4 (1988)
• [文献書誌] Fan,Yu Jen: "Analysis of thermal sweating by capcaitance hygrometry-sweat capturecapsule method.In:Hyperthermic Oncology in Japan '87" Imai Printing ＆ Publishing Co.Ltd., 191-192 (1987)
• [文献書誌] Hori,Seiki: "Natural Acclimatization in hot environments.In:Man in Stressful Environments/Thermal and Work Physiology" Tomas,Springfield, 153-168 (1987)
• [文献書誌] Ogawa,Tokuo: "Thermal and nonthermal control of sweating during rest and exercise.In:Man in Stressful Environments/Thermal and Work Physiology" Thomas,Springhield, 225-236 (1987)
• [文献書誌] Ogawa,Tokuo: "Influence of aging on sweating activity.In:Cutaneous Aging" University of Tokyo Press, 111-125 (1988)
• [文献書誌] Iwase,Satoshi: "Effects of aging on muscle sympathetic nerve activity." SPB Academic Publishing, 1989 (In:D.B.Dill,MilestonesinE)
• [文献書誌] Ogawa,Tokuo: "Trainability of sweat glands in the aged.In:D.B.Dill,Milestones in Environmental Physiology" SPB Academic Publishing, (1989)