研究課題/領域番号 |
61400001
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
太田 秀 東大, 海洋研究所, 助教授 (10013591)
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研究分担者 |
白山 義久 東京大学, 海洋研究所, 助手 (60171055)
石井 輝秋 東京大学, 海洋研究所, 助手 (80111582)
清水 潮 東京大学, 海洋研究所, 助教授 (30101083)
平 朝彦 東京大学, 海洋研究所, 教授 (50112272)
酒井 均 東京大学, 海洋研究所, 教授 (00033126)
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キーワード | 深海生物群集 / 生態系 / サブダクション / シロウリガイ / 化学合成細菌 / 共生 / 潜水艇 / しんかい2000 |
研究概要 |
相模湾初島沖、水深約1100mの地点に見いだされたシロウリガイを主体とした高密度の深海生物群集は、大洋底の沈み込みに伴う力学場で絞り出される遺留水に含まれる化学物質に維持される生態系と見なされている。この仮説を実証すべく、潜水艇「しんかい2000」による当該海域の潜航調査は、科研費の支給される以前の5月から6月にかけて実施された。調査研究に必要な消耗品類は予め都合し、採水器・間隙水採取装置・地中温度計・呼吸量測定器等を準備した。当初予定された4潜航は、海況不良による1潜航の割愛により3潜航となったが、生物・微生物・化学・生化学・地質学・鉱物学の研究者の合同で行われ、下記のような成果を挙げた。なお、潜水艇の研究調査作業においては、他研究機関との協力が図られた。また、海洋研究所の研究船も3航海にわたって当該海域の調査を行った。 1)地中温度が周辺水温より常に約0.5℃高い、2)生物群集の直上で採取した海水に10000μcc/kgと異常に高濃度のメタンが検出された、3)生物現存量が10kg/【m^2】以上あり、通常の深海底の2〜3桁高い値である、4)メタン細菌・硫黄細菌・水素細菌等が検出された、5)間隙水および堆積物中の化学物質の分布に異常が見られる、6)この群集に卓越した生物であるシロウリガイの特殊化した鰓の細胞には、硫黄細菌の共生と硫黄結晶の像が見られた、7)深海湧水域に特徴的なVESTIMENTIFERAと呼ばれる巨大な管棲の蠕虫(西太平洋域で初報告の未記載種)が採集された、8)シロウリガイ、管棲蠕虫のいずれにも炭素・窒素の同位体比に異常がみられ、地中からの化学物質の供給があると考えるべきであることなど、湧水に支えられた特殊な生態系であることが実証された。成果は海洋学会、分析化学学会、日仏「海溝計画」国際シンポジウム、「しんかい2000」研究シンポジウム等で公表され、現在も活発に研究作業が継続されている。
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