研究概要 |
本研究は分子電子工学の最初の具体的デバイスとして、タンパク質分子膜(LB膜)を使った固体化バイオセンサを開発しようとする。研究初年度に当り、タンパク質LB膜の作製方法の確立に努めた。まず、LB成膜装置を使い脂肪酸単分子膜にGOD(グルコース酸化酵素)を吸着させ、金蒸着膜を使った【H_2】【O_2】電極上にGOD・LB膜を付着させた。この構造はグルコースセンサとして機能し、LB膜でありながら水中で剥離せず安定であった。グルコースセンサの特性につき次の特徴が上げられる。すなわち、感度をLB膜の層数で制御することができる、5〜5000mg/dlの範囲で任意に感度を設定できる、安定性と寿命は使用回数100回以上、16日間冷暗所乾燥零囲気中に保存しても特性の劣化が認められない。以上の結果は、LB膜を使い実用性の高いバイオセンサを製作した世界初の成果であるが、学術的に大きな問題を提起した。それはタンパク質分子膜の構造である。脂肪酸分子は長さ30【A!゜】,直径数【A!゜】,一方GOD分子は100【A!゜】位の直径をもつと考えられる。これらの分子が吸着し合い、固体デバイス上に付着したとき、どのような膜構造をしているのであろうか。両分子の大きさ,形状が大きく異なることから、膜内の分子配列は大きく乱れているはずである。乱れているから、グルコースや【H_2】【O_2】が膜を透過し、センサが動作すると考えられる。しかし、どの程度乱れているのか,乱れは制御できるのかを明らかにしない限り、センサの特性改善,製作再現性のチェックなどを行うことができない。今後、分子レベルの膜構造の解明,LB膜成膜条件と膜構造,センサ特性との関係などを解明していく予定である。
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