研究概要 |
今年度は、輻射発生体とMWPCを各一層組合わせた試験器の製作及び、ビームテストに備えてトリガーカウンター等必要な周辺装置の準備を行なった。以下、MWPCと輻射発生物質についてこれまでの成果を述べる。 TRD用MWPCに使用するガスを決定するために、小型のガステスト用MWPCの製作を行ない、アルゴンガスとキセノンガスについて動作を調べた。この実験では、遷移輻射と同程度のエネルギーのγ線源(【^(55)Fe】,【^(57)Co】,【^(109)Cd】)を使用した。アルゴンガス中では光電子の平均自由行程が大きく、数本のワイヤーに渡って信号を与えることが判明した。キセノンガスを使用すると、この点はかなり改善された。更に、アルゴンガスよりγ線の検出効率が5倍程度高いので、TRD用としてはキセノンガスが適当であると判断した。キセノンガスと混合するクエンチングガスには、メタン,イソブタン,二酸化炭素について調べた。これら3種類のガスでは、大差なくMWPCを動作させることが可能であった。ビームテストには、キセノンとメタンを、9:1の割合で混合して使用する予定である。 輻射放出物質は、これまで様々な物質で試験した結果がある。それによるとリシウムが最も良い性能を示している。しかし、化学的に不安定なので、取り扱いに難点がある。我々は、この点も考慮して、ポリプロピレンと、発泡スチロールを試験することにした。ポリプロピレンは、繊維状と薄膜のものがある。薄膜は、多層構造にすることが難かしいが、我々は、熱成型により薄膜に小突起を付ける方法を開発した。この方法で容易で安価に多層構造にすることが可能となった。ビームテストにより、輻射放出体の形状、構造の基礎データを収集する予定である。
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