研究概要 |
昭和61年度は、当初の計画どおり、群馬・長野県境周辺の地質調査および絶対年代・磁化方位の測定をおこない、新第三系の地質構造発達史が明らかになったのをはじめ、多くの新知見をえた(野村・小坂、投稿中)。その概要と問題点は、次のとおりである。 1.地質調査の成果 長野県東部の新第三系の層序が明らかになった。すなわち、下位から内山層,駒込層,八重久保層,香坂層,香坂礫岩層,平尾山火山岩層,志賀溶結凝灰岩層,水落観音溶岩に区別される(小坂・鷹野、投稿予定)。海域から陸域に転化する時期に堆積した板鼻層のうち、上半部の礫岩層は、はげしい火山活動のさ中に形成された。 2.年代測定の結果 本地域に分布する火山岩類の年代は、化石に乏しいため不明であったが、今回の年代測定で、本地域のはげしい火山活動は、中期中新世に始まり、途中にいくつかの不整合をはさんで第四紀までひきつがれていった、という歴史が明らかとなった。 3.地質構造発達史 前期中新世に関東山地北縁にそって東西方向の堆積盆が形成され、そこに砕屑物が堆積、中期中新世に荒船山周辺から隆起・陸化しはじめ、火山活動が始まった。陸地はしだいに北東に拡大し、後期中新世の初頭には、海域が消滅していった。 4.問題点と今後の課題 絶対年代値の中には、地層累重の法則に著しく反するものがあり、この主要原因はグリンタフ変質にある。測定誤差が地磁気の極性変化スケール(約5万〜65万)よりも大きいために、磁化方位を入れた古地磁気編年表をつくることができなかった。今後は、この編年表を完成させるために、放射年代の測定数をふやすこと、層位学的な対比を正確におこなう必要がある。
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