今年度は、群馬県妙義山や霧積川流域の地質調査、古地磁気および放射年代測定用の試料採集・測定、岩石の化学分析等を行い、当初の目標をほぼ達成することができた。主な成果は、次の通りである。 1.妙義山塊の地質調査により、同山塊は地質構造のことなる数個のブロックに区切られていた、なかには垂直になっている区域がある。この区域の磁化方位は、地層が90°転位した分だけ位置をかえている。 2.15試料の放射年代値を得、3年間の合計は65個に達した。今年度の測定によって妙義山塊の形成年代は5〜6Ma、碓井峠から旧国道18号線の北側にのびる平坦な稜線をつくっている溶岩は0.65Maとなり、同峠の東側が侵食されたのはブルンヌ正極性期になってからであることなどが明らかとなった。 3.8Ma以降の地磁気の編年表ができあがった。しかし著しくグリンタフ変質をうけた本宿層は、放射年代によっても年代が特定できず、層位学的に地磁気の変化が分かっても、編年表作成には役にたたないことが明らかとなった。 4.霧積川流域にある剣の峰層に、地磁気反転過程中に形成された溶岩がみつかった。 5.妙義山塊の下半部は逆帯磁、上半部は正帯磁である。 6.変質を受けた岩石と、変質をほとんど受けない岩石とを化学分析した。 なお、過去3年間の成果および反省にもとづいて、今後は、古地磁気試料をさらに増すこと、岩石の化学分析を系統的に行うこと、調査地域を広げることなどを実現していきたい。
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