研究概要 |
本研究は, 高〓度の極微構造加工技術を確立し, これを用いて極微構造素子を製作してその特性を評価し, 次世代の極微構造デバイスの基礎となる量子現象の解明と制御の可能性を追求する事を目的とする.すなわち数nm〜100nmの寸法の極微構造中では, その寸法は電子波のコヒーレント長と同程度またはそれ以下であるため, 種々の量子効果があらわれる.これを解明して, より超高速度超高密度の新しい電子波素子を開発するための基礎を確立する. 本年度は, GaAs/GaAlAsΛテロ構造一次元量子細線を製作し, 量子干渉効果を調べた.前年度においてイオンエッチング加工による側面の加工損傷および汚染のため空乏層が理論値の約2倍(40nm)の深さまで生じる事を見出している. そこで,この幅を考慮して0,2〜0,8μm幅の量子細線を製作し極低温における磁気抵抗の細幅依存性の測定を行なった. この結果, 散乱電子波の干渉によって起る磁気抵抗のゆらぎの周期は, 線幅が非弾性散乱長linより短い場合は, 線幅にほぼ逆比例する事を確認した. またゆらぎの大きさは, 量子細線中に含まれる一辺の大きさをlinとする正方形のサブユニットの数(=(W/lin)×(L/lin),ここでW:線幅,L:細線の長さ)の平方根に比例して小さくなる事を観測し, 量子干渉効果は, ほぼlin^2の領域でのコヒーレントな干渉である事, 電気伝導は局在せずlin^2の範囲の影響を受けている事を確かめた. さらにこれらの測定によってlin=0.8μmである事がわかったので, この結果にもとずいて外周〜1μmのリング素子を製作し, アハラノフボーム効果の測定を行なった. これにより, 理論で予測される周期(n/e)を持つ磁気抵抗の振動を観測し, GaAlAs/GaAsΛテロ構造素子におけるアハラノフボーム効果を始めて確認した.さらに, 振幅と線幅の関係を測定し, 線幅が小さい程, 明〓な振動が現われる事を示した.
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