研究概要 |
本研究は損傷力学的観点から高温機器要素の新しい寿命評価法を確立しようとするものであるが、これは根本的には高温非弾性解析用構成式と、高温でのクリープ・疲労損傷発展式を開発することになる。このため昭和61年度は、当科学研究費補助金で購入した島津サーボパルサ、熱疲労用加熱制御装置、ならびに名古屋大学工学部および豊橋技術科学大学に既設の高温複合負荷試験機、、引張りねじりクリープ試験機を用いて下記の研究を行った。 1.サーボパルサおよび熱疲労用加熱制御装置は、昭和61年12月に納入され、これまで、高温試験用試験片つかみ具、高温用変位計、試験機制御用ソフトウェアの開発をほぼ終っている。現在、高温用変位計の精度の向上と検定、ソフトウェアの検証とともに、主に単軸状態での非弾性変形に対するひずみ速度依存性を検討している。 2、高温非弾性変形挙動のうち、上述のひずみ速度依存性と並んで重要なものに、多軸状態での繰返硬化の問題がある。本年度は、室温から700℃までの各温度での316ステンレス鋼に対して、全ひずみ振幅0.2〜0.6%の繰返し変形実験を行い、繰返し硬化の温度,ひずみ振幅,ひずみ経路等、の依存性を明らかにした。この結果、室温では比例ひずみサイクルによる繰返し硬化と非比例サイクルのそれと違いが大きいが、温度の上昇とともにその差が減少する傾向にあった。また繰返し硬化は400℃〜500℃の範囲で特に著しいことがわかった。 3、以上の実験結果ならびに、文献中の実験結果を参照して、ひずみ速度依存型の多軸繰返し非弾性構成式を定式化した。今後この構成式を基礎として、クリープ・塑性統一型構成式の開発を試みる。 4、長時間クリープ損傷構成式を安定化し、これを2次元非比例負荷の下でのクリープき裂進展解析に適用した。
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