研究概要 |
本研究の目的を達成するために, 昭和62年度は, 1.垂直磁気ヘッドの高感度化, 2.画像信号を記録するための信号処理法についての基礎実験, 3.ヘッドと媒体の耐久性およびこれら両者間のスペーシングに直接影響を与える記録媒体の表面状態について検討した. 1.については, 非磁性層を中間層とし, 飽和磁束密度が従来のCoーZrーNb薄膜の約1.5倍もあるFeーSi膜を積層した構造の主磁極膜を採用した結果, 主磁極膜厚が0.3um以下の高分解能なヘッドでも十分な記録感度が得られるようになった. また, リソグラフィーにより再生コイルをヘッドの主磁極膜先端部に直接形成する技術を確立し, 今後この技術を用いて従来型よりもヘッドの再生感度を大幅に向上できる見通しが得られた. 2.については, デイジタル画像信号を2800ビット/mmの線記録密度で周波数変調方式を用いて記録・再生を行う実験に成功し, 現在, さらに高密度領域の利用を試みているところである. さらに3.では, レーザー光を用いた新らしい手法を用いて記録媒体の微視的な表面粗さの評価や媒体表面の損傷状態の観察を行ない, ヘッド・媒体間スペーシング量と媒体表面粗さの関係や金属薄膜媒体に特有な損傷過程について新たな知見を得た. また, 記録媒体表面の微視的な凸凹の発生原因は, 媒体の基板フィルムとCoーCr層あるいはNiーFe裏打ち層などの金属膜の間の線膨張係数やヤング率の差によってスパッタ法による媒体作成時に内部応力が発生するためであることが判明し, この結果をもとに, 金属膜のこれら定数に近い値を有する基板フィルムを選択して使用することにより, 表面性が良好な媒体を再現性良く作成できるようになった. 今後はエラーレートや耐久性などさらに実用的な観点からの検討をおこなうとともに, これまで得られた研究成果を総合して, 高密度で大容量な磁気ディスク装置と画像ファイル装置を完成させる予定である.
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