研究概要 |
本装置は癌や悪性腫ようなどの早期発見を目的として、従来の超音波映像装置では得られない、生体組織の音響特性の圧力変化に対する応答すなわち超音波非線形パラメータを映像化できる新しい医用診断装置の開発である。そのため本年度はまず実用的な医用診断装置を構成する上で必要になる種々の信号処理手法について検討を加え、実験によりその有効性を確認した。具体的には(1)映像系の奥行き方向の分解能を向上させるために短いバースト信号からの位相復調法、(2)映像系の精度を劣化させる超音波の回折と減衰を実時間で補正するために、時間利得制御回路を用いた信号補正方法、(3)位相のキャンセレーションを防ぐために信号波の周波数を微小に変化させ位相復調器から高いS/Nでの出力信号を得る周波数揺動法などである。これらの成果を組み入れ、本映像装置の細部にわたる設計を行なった。さらに、この設計に基づき、(1)非線形効果を生じさせるために用いる強力な超音波(ポンプ波)用の駆動系、(2)非線形効果を測定するための超音波(プローブ波)用の送波部、(3)非線形効果の寄与分のみを抽出するための位相復調部および信号処理部を制作し、(4)これらを実時間で制御する高速制御装置を組み入れ、医用診断を目的とする映像装置を制作した。この研究過程で、新らたに単峰性の超音波パルスを発生できる電磁誘導型超音波送波器を開発し、これをポンプ波用の超音波送波器として用いれば、超音波非線形パラメータの絶対温度が高い信号対雑音比で可能であることを示した。これらの成果は、1986IEEE、ultrasonic symposium, 11-th international symposium on ultrasonic imaging and tissue characterization、第50回超音波医学会講演会等で報告した。これらの成果をふまえ昭和62年度は、本装置を用いて医用診断のための実験を行なう予定である。
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