研究概要 |
61年度にはαーラクトアルブミンのTrp残基のH【double arrow】c交換を主にN状態で調べたが, 62年度ではpH2で補獲出来る変性中間体(A)でのH【double arrow】c交換をTrp残基による紫外吸収で追跡した. このタンパク質はpH2では会合の可能性もあるので, 尿素を入れてのA状態も研究の対称にした. 交換はA状態でもN状態と同じく単相的ではなく, 明らかにこの中でのTrpおよび分子全体の構造の不均一性が示された. CDスペクトルからは三次構造の完全消失がA状態の特性としてあげられていたが, それは検討すべき事になる. 更にA状態のTrp残基の存在状態のゆらぎの中から推定すると, Trp残基は完全変性状態中のTrp残基よりはるかに交換に対して保護されている事も示された. 注目すべきはその交換の温度変化で, 活性化エネルギーは自由なTrp残基の交換のそれと一致した. 即ちA状態の構造の温度変化はエントロピックな項でのみ説明しうるものになる. このA状態の特色は, A状態に類似していると言われる熱変性状態のH【double arrow】c交換の特色として, 昨年度指摘されていたものでもある. A状態の主鎖構造のH【double arrow】c交換は,FTーIR法でAnde II帯の強度の時間変化から追跡し, そのデータを整理中である. 尚αーラクトアルブミンの相同タンパク質たるリゾチームにもCa^<2+>_ー結合種を61年度に発見し, その一つである馬のリゾチームの構造と酵素活性がCa^<2+>結合型とアポ型とで大きな差がある事を見出した. 特に中性pHでは36℃以上での差が顕著で, これは両型のCDスペクトルから示される三次構造の差が顕著になる温度域と合致する.
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