1987 年度実績報告書

顕微反射分光法による有機伝導体の赤外および遠赤外スペクトルの研究

研究課題

研究課題/領域番号	61430003
研究機関	東京都立大学
研究代表者	池本勲東京都立大学, 理学部, 教授 (00011601)
研究分担者	齋藤一弥東京都立大学, 理学部, 助手 (30195979) 菊地耕一東京都立大学, 理学部, 助手 (40177796)
キーワード	有機伝導体 / 有機超伝導体 / 赤外反射スペクトル / 結晶構造
研究概要	赤外から50cm^<-1>までの波数領域の顕微反射分光法を開発し, 有機伝導体の反射スペクトルを測定し電子状態を研究することにより高温有機超伝導体の開発の指針を得ることを目的とした. 今年度は測定温度領域を広げるため液体ヘリウム冷却器付きマイクロビーム反射測定装置を購入した. これは15Kまでの温度領域で微小試料の反射スペクトルの測定を可能にさせるものであるが, 試料のセットなどに難があるので, 次年度改良を計画している. 試料作成面では昨年同様非対称な電子供与体DMETラジカル塩を取り上げ, 合成ならびに構造を決定し物性を測定した. 電気的性質からDMET塩は五つのグループに分類できた. 正八面体形の対アニオンからなる塩では室温から半導体的な挙動を示した. 正四面体形の対アニオンからなる塩では室温では金属的であるが, 低温で半導体に転移した. 直線形の対アニオンの塩は電気伝導度の挙動から三つのグループに分かれる. Au(CN)_2塩などは常圧では正四面体形の対アニオンからなる塩と同様に, 低温で金属ー半導体転移を示した. I_3塩などは低温でも金属的で, 0.5Kで超伝導転移を示した. AuBr_2塩は温度の減少につれて室温から抵抗が増大するが, 150K付近で抵抗が最大となり, さらに低温では金属的な温度変化を示した. 常圧で超伝導を示さぬAu(CN)_2やAuBr_2塩でも圧力下で超伝導転移を起こし, 計七つの有機超伝導体を発見した. これらは非対称な分子からなる有機超伝導体としては世界で初めてのものであり, 我々の発見は種類を増やす点でも意義が大きいと考えられる. 電気伝導度から分類したグループの代表的な塩の結晶構造並びに磁気的性質も研究し, 構造や磁気的性質がグループの違いによりかなり異なることが分かった. 最近本研究で開発した顕微反射分光法で測定可能な大きさの結晶を各グループの代表的な塩で作成することができたので, 次年度測定を行い光学的性質を明らかにすることを計画している.

研究成果
(9件)

すべてその他

すべて文献書誌 (9件)

[文献書誌] K. Kikuchi, I. Ikemoto, K. Kobayashi: Synth. Metals. 19. 551-554 (1987)
[文献書誌] K. Kobayashi, K. Kikuchi, T. Namiki, I. Ikemoto: Systh. Metals. 19. 555-558 (1987)
[文献書誌] K. Kikuchi, M. Kikuchi, T. Namiki, K. Saito, I. Ikemoto, K. Murata, et al: Chem. Lett.1987. 931-982 (1987)
[文献書誌] K. Kikuchi K. Murata, Y. Honda, T. Namiki, K. Saito, K. Kobayashi, et al.: J. Phys. Soc. Jpn.56. 2627-2628 (1987)
[文献書誌] K. Kikuchi, K. Murata, Y. Honda, T. Namiki, K. Saito, T. Ishiguro, et al.: J. Phys. Soc. Jpn.56. 3436-3439 (1987)
[文献書誌] Y. Nogami, M. Tanaka, S. Kagoshima, K. Kikuchi, K. Saito, I. Ikemoto, et al.: J. Phys. Soc. Jpn.56. 3783-3785 (1987)
[文献書誌] K. Kikuchi, K. Murata, Y. Honda, T. Namiki, K. Saito, H. Anzai, et al.: J. Phys. Soc. Jpn.56. 4241-4244 (1987)
[文献書誌] K. Kikuchi, Y. Ishikawa, K. Saito, I. Ikemoto: Phys. Rev. B.(1988)
[文献書誌] K. Kikuchi, Y. Honda Y. Ishikawa, K. Saito, I. Ikemoto, K. Murata, et al.: Solid State Commun.(1988)

1987 年度 実績報告書

顕微反射分光法による有機伝導体の赤外および遠赤外スペクトルの研究

研究代表者

池本 勲 東京都立大学, 理学部, 教授 (00011601)

研究成果

[文献書誌] K. Kikuchi, I. Ikemoto, K. Kobayashi: Synth. Metals. 19. 551-554 (1987)

[文献書誌] K. Kobayashi, K. Kikuchi, T. Namiki, I. Ikemoto: Systh. Metals. 19. 555-558 (1987)

[文献書誌] K. Kikuchi, M. Kikuchi, T. Namiki, K. Saito, I. Ikemoto, K. Murata, et al: Chem. Lett.1987. 931-982 (1987)

[文献書誌] K. Kikuchi K. Murata, Y. Honda, T. Namiki, K. Saito, K. Kobayashi, et al.: J. Phys. Soc. Jpn.56. 2627-2628 (1987)

[文献書誌] K. Kikuchi, K. Murata, Y. Honda, T. Namiki, K. Saito, T. Ishiguro, et al.: J. Phys. Soc. Jpn.56. 3436-3439 (1987)

[文献書誌] Y. Nogami, M. Tanaka, S. Kagoshima, K. Kikuchi, K. Saito, I. Ikemoto, et al.: J. Phys. Soc. Jpn.56. 3783-3785 (1987)

[文献書誌] K. Kikuchi, K. Murata, Y. Honda, T. Namiki, K. Saito, H. Anzai, et al.: J. Phys. Soc. Jpn.56. 4241-4244 (1987)

[文献書誌] K. Kikuchi, Y. Ishikawa, K. Saito, I. Ikemoto: Phys. Rev. B.(1988)

[文献書誌] K. Kikuchi, Y. Honda Y. Ishikawa, K. Saito, I. Ikemoto, K. Murata, et al.: Solid State Commun.(1988)

1987 年度実績報告書

池本勲東京都立大学, 理学部, 教授 (00011601)