研究概要 |
Pt(100)上のNO分子が非解離で化学吸着した系に193nmのArFエキシマーレーザーを照射し, 光刺激脱離するNOを飛行時間質量分析法により検出した. レーザー光強度依存性により, 3光子過程による脱離であることが確認できた. 光強度の広い範囲にわたって3光子過程であることから, このNOは熱脱離したNO分子(自由分子)の2光子イオン化ではない. 飛行時間法により脱離イオンの運動エネルギー分布の予備的測定を行なってが約0.05eVで, この値も, 光脱離であることを支持している. またレーザーの繰り返し周波数依存性および測定中の雰囲気中のNOの気体の圧力より, 1発のレーザーバルスによるNO脱離の割合は, 飽和吸着時で, 0.02単分子層以下である. この値は光強度の広い範囲にわたって成立している. 熱脱離であると, 光強度の強い領域でこのような小さい脱離量を保つことはない. 化学請着系で光脱離した脱離イオンの検出は本研究がはじめてである. イオン生成の機構として, 1光子により励起中性分子NO^+が脱離し, これの2光子によるイオン化の可能性が高いが, 機構の解明は来年度の重要課題の一つである. 雰囲気中にNO気体が存在しない条件で, NO^+の脱離量の減衰曲線を測定した. Pt(100)に化学吸着したNOに2種類の異なる脱離過程が存在することを見いだした. 早い脱離はPt(100)清浄表面の安定相である(5x20)表面に特有な比較的高密度な表面格子欠陥(ステップ)に吸着したNOからの脱離, 脱離量が多い遅い脱離は平らな面に吸着したNOからの脱離と考えられる. また, この異なる吸着サイト間での分子の移動は非常に子い. この2種の異なる脱離過程は励起過程よりむしろ脱励起過程の相違に基づくと思われる. 以上のように, 研究は着実に, 大きく進展し, 所期の目的が達成できる見通しがついた.
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