研究概要 |
1,1,2,2ーテトライソプロピルジクロロジシラン1と1,2ージイソプロピルジシラン2とのナトリウムによる共縮合ぶ縮合多四員環ポリシランの合成を試み,得られた反応混合物をHPLCにより分析したところ,反応は多数の生成物を同時に与えることがわかった. 各縮環ポリシランをHPLCで分取し,パーイソプロピルビシクロ〔2.2.0〕ベキサシラン3__〜,パーイソプロピルトリシクロ〔4.2.0.0^<25>〕オクタシラン4__〜,パーイソプロピルテトラシクロ〔4.4.0.0^<2,5>,0^<7,10>〕デカシラン5__<>,パーイソプロピルペンタシクロ〔6.4.0.0^<2,7>,0^<3,6>.0^<9,12>〕ドデカシラン6__〜を単離同定した. 3__〜については単結晶(融点384℃)のX線解析により結晶構造を定めた. 環の連結様式はシス縮環であり, 分子は中央のSiーSi結合軸に関してC2対称である. 二つの環のおのおのは屈曲構造をとり,そのこ面角は21.8゜であって相書する炭素骨確化物,ビシクロ〔2.2.0〕ヘキサン7__〜における二面角11.5゜よりは大きいが,想書する単環ポリシラン,すなわちパーイソプロルシクロテトラシランにおける値37.1゜よりはかなり小さくなっている. SiーSi結合距離は約240pmであり,正常値235pmより僅かに長いが, 3__〜に含まれる3種のSiーSi結合の距離はほぼ同程度である. この点は,7__〜の中央のCーC結合が周囲のCーC結合より有意に長くなっている事実と対照的である. 3__〜の光分解では,シリレン放出とジシレン放出の両者が生起することがわかったが,両者を比較すると後者が優先する. したがって,パーシラビシクロ〔2.1.0〕ペンタン8__〜やパーシラシクロブテン9__〜の生成が予測される. 4__〜および5__〜はそれぞれ355nmおよび380nmに紫外吸収極大を示す無色固体である. 一方,6__〜は淡黄色固体である. 4__〜ー6__〜では幾何異性および配座異性の両者が可能であり,構造化学的にも物性化学的にも極めて興味深い化合物であるので,各異性体の分離が今後の主要な努力目標である.
|