研究概要 |
小員環アルカンのオールケイ素類縁体として、ヘキサネオペンチルシクロトリシラン、ヘキサキス(トリエチルシリル)シクロトリシラン、オクタキス(エチルジメチルシリル)シクロテトラシランおよびオクタイソプロピルシクロテトラシランを対応するジハロシランのアルカリ金属(リチウムもしくはナトリウム)による還元的カップリングで合成し、これら新規物質の構造をX線構造解析法などにより確定した。また、紫外光電子分光法や酸化電位測定により、これら化合物が高エネルギー物質であることを明らかにした。 ポリシクロアルカンのケイ素類縁体として、ペルイソプロピルビシクロ〔2.2.0〕ヘキサシラン、同トリシクロ〔4.2.0.0^<2,5>〕オクタシランおよび同テトラシクロ〔4.4.0.0^<2,5>.0^<7,10>〕デカシランを1,1,2,2ーテトラクロジイソプロピルジシランと1,2ージクロロテトライソプロピルジシランとのリチウムによる共縮合により合成した。ビシクロヘキサシランについてはX線構造解析を行ない、環内の4種のケイ素ーケイ素結合の距離はほぼ等しいなど、炭素類縁体(ビシクロ〔2.2.0〕ヘキサン)には見られない構造上の特徴を同ポリシラン分子が有することを見いだした。また、得られた3種の梯子型(ラダー)ポリシランの紫外吸収スペクトルや酸化電位を測定したところ、多環化は最低空軌道(LOMO)のエネルギー準位を低下させる(換言するならば、同軌道の電子受容性を増大させる)などの機能開発上有用な知見を得た。 そのほかに、空気中で著しく安定なケイ素ーケイ素二重結合化合物であるテトラキス(2,4,6ートリイソプロピルフエニル)ジシレンを合成した。さらに、高歪かご型ポリシランの最初の例であるオクタキス(tーブチルジメチルシリル)オクタシラキュバンを合成し、高歪ポリシランの機能開発に新しい道を開いた。
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