研究概要 |
セジメントトラップを主たる研究手段として, 西部北太平洋において得られた結果を, 従来の東部太平洋, 南極海, 噴火湾等で得られた結果と比較検討した結果, 次のような結論あるいは推論が得られた. 1.深海への物質移動束は, 表層水の生物活動と密接な関係を有しており, 沿岸域や北部北太平界の春季や夏季において極めて大きな値を示し, 亜熱帯域の10〜100倍に達した. 2.表層における生物活動の結果は直ちに深海や海底に伝えられるが, 沈降粒子の平均速度は, 生物生産の活発な海域ほど大きくなり, ブルーム期には, 1日に数百メートルに達した. 3.しかしながら, 表層水中での生物生産量と沈降粒子束とは必ずしも常に連動しているわけではなく, 生物生産が活発になっても, しばらくの間は粒子の沈降束は増大せず, ある時に一斉に沈降し始める場合があった. 4.外洋域においては, 一般に粒子束の増大は, 生物のケイ酸塩殻の増大によるものであり, 石灰質(炭酸塩)の殻の粒子束はあまり大きな変動を示さなかった. 5.本州南方のフィリピン海盆域は, 他海域と異なり, 陸起源のアルミノケイ酸塩が主成分だった. その推積速度は, 中部太平洋域の1桁上であった. 6.沈降粒子のFe/Al比をみると, 北太平洋では, アジア大陸よりからアメリカ大陸寄りにかけてだんだんと増大した. しかし, いずれも海底地殻の物質についての比の値より大きく, これらアルミノケイ酸塩の大部分は陸起源があり, その量および割合は, アジア大陸に近いほど大きいことが示された.
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