研究概要 |
本研究は, スピンエコーおよびスピンエコーENDORという新しい測定手段を用いて, 遷移金属属錯体を新しい視点のもとで研究しようと企画されたものである. 従ってその研究の第1ステップは, スピンエコーおよびスピンエコーENDORの装置を製作することであり, 昨年度に引き続き装置の組み立てとその問題点の整理が行われた. その結果現在2パルススピンエコー,3パルススピンエコー, 3パルスT_1の測定がほぼ実用可能となった. 以上のパルスシリーズにおいて,パルス出力は1Kw,パルス立上り10ns,パルス幅60ns,パルス間隔は0から1nsの間,2.5nsのきざみ幅で行うことが可能であるが, 尚, 当研究室で以前にENDORにより詳細に検討した〔N,N′ーethylenebis(salicylidenei-minato)copperを対象にテスト等を繰り返している. またスピンエコーENDORに関しては, ラジオ波パルス基板の改善に多少の問題を残してはいるが, 主に窒素・硫黄配位銅(II)錯体を対象に装置の問題点の整理を進めており, 装置の本格的始動が近い. 以上のような主に装置の組立てに関連する研究以外に今後のスピンエコーENDORの基礎デーテの収集の目的のため, 銅・硫黄配位銅(II)錯体のENDORによる^<14>N超微細相互作用の検討を進めてきた. この一連の試料は, 最近関心がもたれているブルー銅蛋白のモデル錯体としても興味ある錯体であり, 単結晶試料の作成に努力すると共に, 粉末または凍結溶液試料を用いてENDORの測定を行った. その結果, このような非配向性試料からでもENDOR測定のためのモニターに用いているESRスペクトルの異方的性格を巧みに利用すれば, 超微細相互作用の主値のみならず, テンソル主軸のgテンソルに対する相対的配向をも決定できることなどの, 極めて興味あることが見出された.
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