研究概要 |
本研究は, 一酸化炭素 有効利用のための新触媒系を確立することを目的とするものである. この目的を達成するための有望な反応系として, セレンー一酸化炭素反応系(Se/CO)とコバルトカルボニルーヒドロシランー一酸化炭素反応系(CO_2 (CO)_8/HSiR_3/CO)の2つの反応系を設計し, 実用化に向けての基礎研究を進めている. 本年度は前者の反応系に焦点を当て, その反応機構の解明と本反応系の適用範囲の拡大とともに, セレンの触媒能の高率化を目的とした. 本年度の研究成果の概要は次のとうりである. 1.Se/Co反応系を用いるカルボニル化反応は2つの段階に分けることができる. 第1段階はセレンと一酸化炭素より活性中間体であるセレン化カルボニル(Se=C=O)を生成する段階であり, これはSe/CO系を用いるすべての反応に共通する最も重要な段階である. このモデル反応系として一酸化炭素と電子的に等価なイソニトリルを用いるSe/RNC反応系を設計し, 反応速度におよぼす諸因子を明らかにするための研究を開始した. 2.Se/CO反応系の第2段階は, 活性中間体であるセレン化カルボニルに対する各種求核剤の攻撃および, これにつづくカルボニル化合物の生成である. 本年度は, 求核剤としてアミン類を用い^<77>Se NMRを利用し尿素生成に至るまでの反応経路を明らかにした. ここで得られた重要な知見は, 本反応において用いるアミンの種類, 反応温度等により, 主反応経路が異なることである. 3.Se/CO反応系の応用として, ジアミン, アミノアルコールの他, 種々の2官能性アミン類を用いたところ, カルボニル化が容易に進行し, 環状尿素, 環状ウレタンのほか, 対応する環状カルボニル化生物が高収率が得られることが明らかとなった. 本反応の特徴は, 7員環, 8員環等中員環化合物も高収率で生成させることができることである. 4.また本系の応用として, 新規化合物である種々の含セレン複素環化合物の簡単な合成法を開発した.
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