研究概要 |
1.全重水素化メタクリル酸メチル(MMA-【d_8】)を種々のアニオン開始剤を用いて重合させ、生成重合体の【^1H】NMRスペクトルの解析から開始剤断片のポリマー鎖への結合様式とその数,ならびに停止末端の構造を調べた。【C_2】【H_5】Li,【C_4】【H_9】Li,【C_2】【H_5】MgBrおよび【C_4】【H_9】MgClによる重合では、MMA-【d_8】単位の末端を有するポリマーのほかに、モノマーのカルボニル基への開始剤の付加によって生成したアルキルイソプロペニルケトン(RIPK)の単位を末端に有するものが存在することを明らかにした。これら二種の末端アニオン、さらにRIPKと共に副生するアルコキシドや未反応の開始剤の存在が重合活性種を複雑,多様なものとするため、立体規制ならびに分子量の制御を困難にしている。一方、【C_5】【H_(11)】C【(C_6H_5)_2】Liやt-【C_4】HgMgBrのようなかさ高いアニオン開始剤を用いると、カルボニル付加の様な副反応が起らず、クリーンな重合系となり、殊にt-【C_4】HgMgBrによる重合では、高度にインタクチックで分子量分布の狭いPMMAが得られた。その両末端の立体化学を二次元NMR法で解析し、開始および停止反応における立体規則性が生長反応のそれより低いことを見出した。【(C_2H_5)_3】Alと【(C_2H_5)_3】Pあるいは【(C_6H_5)_3】Pの錯体による重合では高度にシンジオタクチックなPMMAが得られた。末端基構造の解析から、ホスフィンが開始剤で、【(C_2H_5)_3】Alが助触媒として作用することを明らかにした。 2.【C_4】HgLiおよび【C_4】HgMgClによる重合で生成する低重合体の構造を質量分析法で調べた。分子イオンからRIPK単位を含むこと、フラグメントパターンからRIPK単位が停止末端に位置することがわかった。これらの結果から、低重合体アニオンの一部はRIPKを付加して活性の低いアニオンとなるため、擬停止状態にあるものと思われる。この成果は、重合化学の基礎的研究における質量分析法の有用性を明らかにしたものであり、次年度の研究計画を遂行するうえでの重要な基盤を築いたものといえる。
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