研究概要 |
1.tーC_4H_9MgBrによるMMAの重合反応の初期に生成したオリゴマーを重合度ならびに立体異性体ごとに分別し, 質量分析で化学構造を確認し, 二次元NMR法によりその立体構造を明らかにした. 各重合度のオリゴマーの異性体分布から, 一量体アニオンへのモノマーの付加のメゾ/ラセモ選択比は10〜20で二量体アニオン以降の場合(約50)に比べて低く, 停止剤のプロトンの付加には選択性がないことがわかった. (C_2H_5)_3Alと(C_6H_5)_3Pあるいは(C_2H_5)_3Pの錯体によるオリゴマー化反応の生成物の構造を質量分析, NMRで解析し, 重合反応はR_3Pの付加によって開始され, 特異な構造の二量体の生成を経て進行することがわかった. 2.R_3AlーtーC_4H_9Li(Al/Li≧3)によるトルエン中でのMMAの重合はリビングに進行し, 分子量分布が狭く, シンジオタクチック三連子90〜96%のPMMAを与えることを見出した. 得られたPMMAはtーC_4H_9MgBrによる重合で得られるイソタクチックPMMAと化学的に同じ構造であり, いずれの重合系も分子量制御が容易なリビング重合系なので, PMMAの物性などに対する立体規則性のみの影響を調べるのに最適の試料を得ることができ, 次年度の研究遂行上の基礎的手法が確立されたことになる. tーC_4H_9LiーR_3Alで得られるオリゴマーの立体構造についても1.と同様の方法で解析し, 立体規制についての知見を得た. 3.CH_3(CH_2)_2CD_2M(M=Li,MgCl)によるMMAーd_8の重合を行ない, 生成ポリマーおよびオリゴマーの^1H NMR解析より, 副生成物であるブチルイソプロペニルケトンに由来する単位が, 分子鎖の末端および主鎖内部に存在することをつきとめた. CH_3CD_2MgBrによるMMAーd_8の重合で得られたポリマーの^1H NMRでは, 開始末端のエチル基とケトン単位のエチル基の吸収を区別して観測でき, またケトン単位のほとんどが末端に存在することがわかり, MMAのアニオン重合で副生するケトンの重合反応への関与が一般的な現象であることが明らかになった.
|