研究概要 |
1.F-アクチンの熱変性:遊離ATPを除去したF-アクチンの熱変性挙動が明らかにされた。イオン強度0.6,pH6.0の熱ゲル化反応標準条件下で、ミオシン-【Mg^(2+)】-ATPase活性化能やF-アクチン-ATPase活性などの生物学的活性を示標とした研究、粘度及び濁度を目安とした流体力学,分光学的測定,示差熱分析実験による解析を総合的に検討した結果、F-アクチンは30〜40℃におけるフィラメント間の凝集反応、45〜50℃域における生物学的活性喪失の反応をへて、70℃附近で最終的な吸熱的変性反応にいたる三段階の変性過程をたどることが確認された。この系に調節蛋白質トロポミオシンを添加すると、熱凝集反応はみかけ上高温度側に、生物学的活性変化は低温度側にずれる現象がみられた。2.ミオシンSH基の化学修飾:ミオシン-アクチン相互作用(複合体形成)とミオシンの熱ゲル化反応との関連が、ミオシンの反応性にとむSH基(SH,及びS【H_2】)の【N_1】【N^1】-p-phenylenedimaleimide(p-PTM)による不可逆的修飾、及び5.5´-dithiobis(2-nitrobenzoic acid)(DTNB)による可逆的修飾によって明らかとなった。すなわち、p-PTMによって不可逆的にF-アクチンとの結合能を失なったミオシンは、その熱ゲル化反応へのF-アクチンによる補強効果を一方的に失うが、可逆的修飾剤DTNBを用いた場合、修飾中はF-アクチン効果が抑制され可逆的な修飾解除に伴なって効果が復活する。この事実は、F-アクチンによるミオシンの熱ゲル化反応増強効果は、F-アクトミオシン複合体形成を必須条件とすることを示す。3.ミオシンフィラメントの熱ゲル化反応:ウサギ骨格筋ミオシンの熱ゲル化反応の至適条件は、われわれの研究によって、pH6.0,イオン強度0.6,加熱温度65℃とされた。ミオシンはこの条件下でモノマーとして存在する。しかし、原料肉のイオン強度下(約0.2)でもミオシンは高いゲル形成反応を示す。ミオシンはこの条件下ではフィラメントとして存在するので、その機作を解明中である。
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