研究概要 |
I,ミオシンフィラメントの再構成と, 筋原線維中に局在する微量調節蛋白質, Cー蛋白質の熱ゲル化反応に及す影響を調べた. ウサギ骨格筋ミオシンをpH6.0,0℃,0.6ー0.1MKClの条件下で濃度低下時間を変えて, Cー蛋白質共存及び非共存下でフィラメントを再構成し, 加熱前のフィラメントの状態と加熱後のゲる形成能との関連を走査型(SEM)及び透過型(TEM)電子顕微鏡法を用いて精査した. 得られた結果は次の通りである. (1)cー蛋白質の存否にかかわらず, 塩濃度低下に要する時間が長い程, 生ずるテァラメント長は長い. (2)cー蛋白質の存在は, フィラメント直径を小さくする. (3)フィラメント長の長いときの加熱ゲルは糸状で緻密である. (4)短いフィラメントは凝集連続型で粗い網目構造を示す. (5)したがって, 長くかつ直径の太いフィラメントほどゲる強度が高い. II,ニワトリ胸筋(白色筋)と脚筋ブ赤色筋)を用いてミオシンを調製し, 筋肉型によるミオシンの熱ゲル化反応の差を0.6MKCl中で検討した. その結果(1)胸筋ミオシンはpH5.2ー6.0の間で脚筋ミオシンより著しく高い加熱ゲル剛性率値(約20,000dyne/cm^2)を示した. (2)粘度及び濁度を測定すると, 胸筋ミオシンは濁度がph6.0以下で増加し, 粘度もそれに伴なって上昇する. (3)脚筋では濁度はpH5.7以下で著しい上昇を示すが粘度は逆に低下する. (4)加熱前のpH5.7及び5.4におけるミオシンの状態をTEMで観察するて, 胸筋ミオシンは0.6MKCl,pH5.7でフィラメントを形成し, これが長く成長してpH5.4で最長となる. (5)これに反して, 脚筋ミオシンはph5.7でほとんどフィラメントを形成せず,pH5.4で短い分散型フィラメントを形成する. 以上I及びIIの実験事実から,ミオシンの筋肉型や種の相異による異常な熱ゲル化反応は, ミオシンアイソザイムのフィラメント形成能の差に由来するものとして, 統一的な解釈が可能となった. この場合の加熱ゲル架橋結合は頭部間相互反応であることが示唆されている.
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