研究概要 |
吉村は高毒性アルカロイド,ストリキニーネおよび臨床にも使用される、スコポラミンの代謝について検討した。ストリキニーネ代謝物として既報5種の他に16-ヒドロキシ体と18-オキソ体を確認し、スコポラミン代謝物としてP-ヒドロキシ体,P-ヒドロキシm-メトキシ体およびN-脱メチル体を確認した。西岡は烏竜茶,コバンモチ,ミズナラ,Cassia fistula、Mallotus regandus等のポリフェノール類の構造研究を行ない10数種の構造を決定した。古森は細胞の重要な生理機能に関与しながら混合物のまま検討されている、グリコスフインゴリピドを海星類海産動物より初めて純粋に単離する事に成功し、6種中,3種の絶対構造を三次元立体化学的に明らかにした。 酒井は、酵素化学的手法を用いる光学活性アラキドン酸カスケード郡の合成について検討し、光学純度を【^1H】-NMRで迅速に決定した。即ち、血小板活性因子,11-デオキシプロスタグランジン,カバーサイクリンなどの合成加水分解酵素の機能解明などに応用した。井本は、3種の化学修飾リゾチームの構造変化および、ゆらぎの変化を【^1H】-NMRより解析した。その結果、リゾチームの構造変化は、修飾部位から遠く離れた残基にまでおよぶ事がわかった。またトリプトファン残基のN-1水素の交換速度から、構造のゆらぎは、修飾による変性の熱力学量の変化よりも誘起された構造的歪みの影響を強く受ける事を明らかにした。 以上の重要な生体成分および代謝産物の化学的研究に【^1H】-NMR(270MHz)スペクトロメトリーを極めて有効に活用する事が出来た。初年度に得られた結果を基礎に、二次元FT-NMRによる迅速構造解明法を確立し、目的を達成する計画である。
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