研究概要 |
62年度は61年度に確立された構造解明のための条件を基礎に,二次元FTーNMRによる迅速構造解明法を整備確立し,目的を達成すべく研究を行なった. 吉村はストリキニーネについて各代謝物の定量法を確立し,ラット肝臓におけるin vitro代謝実験により,代謝物の生成について定量的検討を加え,生成に及ぼす薬物代謝酵素誘導剤の影響についても検討した. スコポラミンについては,ワイドボアカラムを用いたGLCによる定量法を確立し尿中代謝物につき検討を加えた. 西岡は,緑茶,鳥龍茶,紅茶,大黄,邦産Quercus植物並びに種々の台湾産薬用植物のタンニン及び関連化合物に関して化学的検討を加え,約90種の新化合物を単離し構造を解明した. 古森は,棘皮動物より,セレブロシド型よりさらに高分子の新スフィンゴ糖脂質2種の単離に成功し化学的及びFTーNMRを中心とした機器分析的知見からそれらの構造を明らかにした. 糖脂質アグリコンに相当するフィトスフィンゴシン塩基の立体化学を,別途不斉合成した光学活性体とのFTーNMRを基礎に比較決定した. 酒井は,血小板活性化因子(PAF)及びそのエナンチオマーの生体融媒を用い不斉合成を検討した. プロキラルなmethyl 2ーoxoー4,4ーpropyrenedithiopentanoateの微生物還元により高光学純度のαーヒドロキシエステルを得る事に成功した. このものより短工程でPAF合成中間体である(-)ーbatyl alcohol及びそのエナンチオマーに交換を行なった. 井本は,化学修飾リゾチームのトリプトフアンのインドールNー1プロトンの重水素交換速度をFTーNMRを用いて測定した. その結果,各修飾リゾチームの重水素交換速度はそれらの熱安定性とは相関がなかった. 従って重水素交換は分子全体の大きな構造変化経由ではなく,局部的分子の揺らぎ経由でおこり,化学修飾は,この揺らぎに影響を及ぼしていると結論された. 以上の如く,こらの研究にFTーNMMRが極めて有効に使用される.
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