研究概要 |
(1) 前年度葉緑体チラコイド膜中に存在する光化学系II(PSII)複合体を部分的に解体し, 密度勾配超遠心法により蛋白質組成の異なる4種の小複合体を分離した. さらにHPLCにより分子量43kdaと47kDaの蛋白質の単離に成功した. 本年度はこれらの複合体を用いて, 光化学反応中心とPSIIに存在する水分解酵素系蛋白質の結合に関与する蛋白質の同定を試みた. 水を酸化し, その電子によりQ_Aを還元するPS・IIの基本的機能を有する最小単位は分子量47,43,33(D_1),33(D_2)33kDa(水分解系)の蛋白質およびテトクロームb_<559>(cyt b_<559>)から構成されている(PSII反応中心複合体). この内光化学反応中心はD_1/D_2/cyt b_<559>複合体に結合しているが, 光化学反応中心と水分解系33kDa蛋白質の結合には43kDa蛋白質が関与していることを明らかにした. (2) PSIIの光化学反応中心を結合するD_1,D_2蛋白質は紅色光合成細菌RPS Uiridisの光化学反応中心を形成するL,Mサブユニットに対応し, 両者に結合している補欠分子の組成は基本的には同じであると推測されている. しかし両反応中心に結合しているcytの性質は全く異なっており, PSIIではb型cytが膜を貫通した形でD_1,D_2に強く結合している. このcyT b_<559>には異なった酸化還元電位を持つ2つの状態が存在し, 高電位型(HP),低電位型(LP)と名付けられている. しかしその生理的意義は全く分かっていない. 本研究では, cyt b_<559>のうちHPーcyt b_<559>が光化学反応中心の励起によって惹起される循還的電子伝達能を有することパルスレーザフォトリシス法により明らかにした. HP cyt b_<559>を含むPSII反応中心複合体を光励起すると2μ秒以内にcyt b_<559>の還元が起り, 続いて4μ秒と200μ秒の2つの時定数を持つ再酸化が起る. 光化学反応中の再還元に〓200μ秒の成分があり, これとcyt b_<559>の再酸化の200μ秒の成分の強度には比例関係があることからcyt b_<559>が, 循還的電子伝達鎖を形成していると結論.
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