研究課題/領域番号 |
61430028
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
豊島 喜則 広島大学, 総合科学部, 教授 (60013166)
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研究分担者 |
椎名 隆 広島大学, 総合科学部, 助手 (10206039)
赤堀 興造 広島大学, 総合科学部, 助教授 (80034578)
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キーワード | 光化学系II / PS II / Q_A / チトクロ-ムb_<559> / 光誘導 / 再構成 |
研究概要 |
本研究は本年度が最終年度であり、当初計画した研究(1)のまとめと、今後に継がる関連研究(2)の予備的研究を行った。 (1)高等植物の光合成光化学系II(PS II)複合体を構成する蛋白質群のうちチトクロ-ムb_<559>(Cyt b_<559>)とL蛋白質(Psb L翻訳産物:5kDa)の機能を調べた。前者については前年度PS IIの光励起に伴うCyt b_<559>の酸化と還元の速度を決定したが、本年度はその酸化種と還元種がそれぞれZ^+とQ_Bであると同定した。この結果、PS II光励起に伴うP^*_<680>→Pheoa→Q_A→Q_B→Cyt b_<559>→Z^+→P_<680>の環状電子移動が存在することが明らかとなった。Cyt b_<559>→Z^+の電子移動は時間分解EPR法により測定した。環状電子移動の生理的意義については現在検討中であるが、PS IIに存在する水分解系の形成および修復時に寄与していることを示唆する結果を得ている。後者に関しては、界面活性剤を用いてPS II粒子から種々のサブユニット蛋白質を解離し、HPLCによりそれぞれを単離した後、再構成することにより,L蛋白質がP^x_<680>→Q_Aへの安定な電荷分離に必須の成分であることを見出した。この結果は紅色光合成細菌の光化学反応中心に比べ、高等植物のPS IIはより複雑な制御機構を保持していることを示している。 (2)当初の計画では既に形成されているPS II系を人工的に解体、再構築を行うことによりPS IIにおける光電荷分離の分子機構を調べることを目的とした。しかし研究を進めて行くに従い、invivoでのPS II複合体の形成過程を調べることが分子機構の解明にとって不可欠であることが分かってきた。PS II複合体の形成は光誘導により人為的に制御できる利点を利用し、形成過程の解析に着手した。まず最初のステップとして、サブユニット蛋白質の内葉緑体DNAにコ-ドされているものに着目し、光誘導によるそれらの遺伝子発現過程をmRNAの量的質的変化を追跡することにより調べた。その結果PSbCおよびPsbD遺伝子の転写とmRNAのプロセッシングが光誘導を受けることを確認した。
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