研究概要 |
卵外被および卵外被に作用する精子側の因子につきそれぞれの単離・同定を中心に研究した. 1.マボヤ卵黄膜のアスパラギン結合型糖鎖には, 硫酸基を含む少量成分もあるが, 大部分は中性でその主要成分6種については構造を決定した. 下に示したものが全体の約7割を占めていた. 2.マボヤ精子よりNーアセチルヘキソサミニダーゼを部分精製した. この酵素は上記糖鎖構造を認識して, 卵との結合に与るものと推定された. 3.マボヤ卵黄膜中の弱酸可溶性成分が, 自家・非自家の識別に与っていることを明らかにし, その精製を開始した. 4.マボヤ精子には卵黄膜主要成分(58Kタンパク質)を消化するプロテアーゼがあり, ライシンとして働いているものと推定された. 5.ヒトデCoーARISIIの化学合成を目指し, 側鎖硫酸エステルも含めてステロイド部分の構築には成功した. 目下, 糖鎖部分の合成法を検討中である. 6.有棘目のイトマキヒトデでも, 叉棘目のキヒトデ同様, 先体反応は, 卵ゼリー中のARIS,CoーARIS,精子活性化ペプチドの共動作用により誘起されることを明らかにしこの機構はヒトデ類一般に共通であると推定された. 7.キヒトデ卵ゼリー中の精子活性化ペプチドの部分精製を行うとともに, ARIS糖鎖構造の部分的解明を行った. 8.キヒトデ精子より, 新奇なガングリオシド, 中性糖脂質を見出し, 一部については構造を明らかにした. 9.ムラサキウニ卵よりメリビオース構造(動物界では末報告)をもつ新奇な中性糖脂質を単離し構造を決定した.
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