研究概要 |
1.好熱性細菌のl乳酸脱水素酵素(LDH)の部位特異的変異 Thermus caldophi lus GK24のLDHの制御部位に存在するアミノ酸残法, HISー188,Argー256,Argー259,Glyー267,Tyrー269を部位特異的変異により, Glnー173(173Q), Lysー173(173K), Gluー173(173E), Pheー188(188F), Aspー256(256D), Glnー256(256Q), Glnー259(259Q), Argー267), Hisー269(269H)の変異酵素を得て, 大腸菌で発現させたところ, いずれも活性を有しており, アフィニティクロマトグラフィー等により精製した. 2.変異酵素の特性 この制御部位には制御エフェクターであるフルクトース1,6ー二燐酸(FBP)が相互作用すると考えられているが, 173Kは元の酵素と同様な性質を有していたが, 173Q, 188FはFBP非存在下でも元の酵素のFBP添加時に似た特性を示し, 267Rでは低濃度のFBPでも活性化された. また173E, 256D, 267Qでは低い活性しか示さなかった. これはFBPの結合にはこの部位の正電荷が重要な働きをしていること, 173R, 188Hの正電荷の存在がこの酵素の正常な活性部位形成を妨げているものと考えられる. さらに, 256Dでは基質ピルビン酸に対する親和性が減り, 269Hでは最大速度が14倍に増加したことからこの領域は活性部位に密接な関係をもつものと考えられる. 3.^1HーNMRのTRNOEによる酵素結合NADの構造の解析 TRNOE(Transferred Nuclear Overhauser Effect)により, FBP添加, 無添加時の酵素結合NADの構造変化を元の酵素, アルギニン残基化学修飾酵素, 173Q変異酵素について測定し, HADのニコチンアミド環とリボースの立体構造の変化を明かにし, 制御部位の変化が活性部位の構造変化を引き起こしていることを実証した.
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