研究概要 |
1.酵母の胞子形成はNH_4^+の存在により特異的に抑制される. 福井はこの抑制を解除する遺伝子を酵母遺伝子ライブラリー中に検索し, 3種の遺伝子をクローニングした. また昨年度より研究中の胞子形成時特異的に転写の起こるグルコアミラーゼ遺伝子(SGA)の発現を支配するSGA5′上流領域の解析をさらに進め, 発現の正の調節因子enhancerの結合部位を決定した. 2.東江は各種醸造酵母内に存在する核外遺伝子(2μm様DNA)の1つであるpSB3の安定保特機構とそのクロモソーム構造との関りを解析し, pSB3の安定性をtransに支配する領域B,Cとその産物が結合するSTB領域の存在を明らかにした. またこのSTB領域はヌクレオソーム8量体と結合しない特異なDNA構造を持つ可能性を明らかにした. 3.上領は酵母ペルオキシソーム蛋白の細胞内輪送機構を解析するためのin vitro系をC.maltosaの宿主ベクター系を用いて確立した. 現在3種のPOX遺伝子内にin vitroで種々の変異を導入し, 蛋白輸送のシグナルとなる部位の検索解析を行っている. 4.宮川は昨年度に引き続き酵母の性分化情報のトランスメンブレンシグナリング機構の解析を行い, 性フェロン情報の2次メッセンジャーとして仂くCa^<++>の上昇が,フェロモンレセプターのペプチド分解作用で生じたファルネシルトリペプチドが細胞膜Ca^<++>ーATPaseの活性を特異的に阻害する事により生じている事を明らかにした. またフェロモン分子をコードする遺伝子の単離,DNA塩基配列の決定を行い,本分子がシグナルペプチドを欠く特異な前駆体として合成される事を明らかにした. 5.土屋は酵母のDNA複製を正に調節し,hsp70と相同性を用つ核蛋白p70を抗体を用いて精製した本蛋白が蛋白リン酸化活性を持つ事を明らかにした. また単離核を用いたin vitro系によりDNA分子の核内への輸送機構を解析し,この反応が核内に存在するA TPase,蛋白リン酸化酵素の作用に強く依存したものである事を明らかにした.
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