研究概要 |
3歳から9歳までの競走馬6頭について、上皮小体ならびに甲状腺の電顕的検索、および血清,糞,尿および飼料中のミネラル含量特にカルシウムとリンについての分析を行った。その結果、上皮小体主細胞はゴルジ装置や粗面小胞体など細胞内小器官の発達は悪く、脂質滴も認められたことにより、休止期の状態にあると考えられた。一方、甲状腺C細胞は細胞内小器官の発達は良く、分泌物を集積したゴルジ嚢や、同心層状の粗面小胞体が認められたことなどから活性期の状態にあると考えられた。血中のカルシウム濃度は正常であったが、尿中では非常に上昇しており、競走馬が恒常的な高カルシウム状態にあることが窺われた。 次に骨折馬58頭および非骨折馬33頭の第三中手骨について病理組織学的ならびに力学的に検索した。骨組織に中心管の拡張ならびにハウシップ窩の形成が見られ、その程度を-〜+4まで5段階に分けて観察した。種子骨骨折馬では60%が+2であったが、それ以上の大型骨の骨折馬では64%が+1であった。一方、骨折馬と非骨折馬の間に、剛性については有意な差が見られなかったが、大型骨の骨折馬は粘弾性の値の高いものに多く、種子骨など小骨の骨折馬では値の低いものに多い傾向がみられた。 健康馬25頭,非骨折馬11頭,骨折馬14頭の血清中上皮小体ホルモンおよびカルシトニンをラジオイムノアッセイキットを用いて測定した。健康馬の血清上皮小体ホルモン濃度は8.40±0.57ngEq/mlで、カルシトニン濃度は53pg/ml以下であった。種子骨骨折例は健康馬の範囲内であったが、それ以上の大型骨の骨折では上皮小体ホルモンおよびカルシトニン値に健康馬と比べて著しく高いものがあった。 以上、骨折の素因については種子骨など小骨の骨折と、それ以上の大型骨の骨折に分けて考察する必要のあることが判明した。
|